「何かかがおかしい」集団下校時、母親の姿を見た途端に表情を変えた娘と、態度が急変したクラスメイト【漫画家インタビュー】
公開日:2025/6/12

ハルコが笑顔で通う学校は、実は孤独な闘いの場だった。娘のハルコが学校でいじめられているという噂を、息子のフユタがナツミに話すところから物語が始まる。娘の様子を見ていくうちに疑念は確信へと変わっていき、そして徐々に、加害者と被害者の境界が揺らいでいく複雑な事態であることがわかっていきーー。娘が学校で受けているいじめと向き合う家族の奮闘を描いたコミックエッセイ『家族全員でいじめと戦うということ。』(KADOKAWA)。著者であるさやけんさんにお話を伺った。
自然教室から3カ月後、ちょっとケンカしたくらいでもう仲直りしているのかもしれないと思い、娘の下校の様子を見に行く。だが娘は誰とも話さず集団下校の列の端をひとりで歩いていた。しかし母を見つけるとハルコは笑顔を見せ、さらにさっきまで一言も話していなかったクラスメイトから「また明日ね」と声を掛けられる。
――実話をもとにしているとはいえ、ナツミという母親像に創作的な要素を加える部分はありましたか?
ナツミのモデルになった人物をそのまま描くのではなく、「ナツミならこのときどんな言葉を発するか」と私の想像で描いた部分もあるにはあります。
しかし、我が子のために心を痛め、時には先生やクラスメイトを責めてしまいながらも、常に自分を恥じ、後悔し、自身を責めて追い詰められてしまったナツミの人物像は、本人の性格そのままを描いています。
――ハルコの繊細な表情や感情の変化は、どのような点に注意して描かれましたか?
いじめられている事実を隠し、「友達と仲良く遊んでいる」と笑顔で痛ましい嘘をつきながら4年間も生きてきたので、笑顔で明るく振る舞いながらも、どこか影があるような、暗く冷めた印象にも見えるように描きました。
いじめの事実が明るみになり感情が一気に溢れ出した後は、これまでの4年間の偽りの自分が消えてしまったことで、まるで人形のように表情が消えてしまうのですが、少しずつ本来の自分を取り戻す姿を丁寧に描きました。
――ナツミの嫌な予感を掻き立てる、りぃの初登場シーンが印象的です。「何かある!」と思わせる演出や設定で工夫されたことを教えてください。
このエピソードに関しては、実際の出来事そのままで描いています。子どもというのは、何かを「知られたくない」と思えば思うほど焦るとか、懸命に取り繕うとか、そういうあたふたした状態にはならず、実際は不自然なほど自然に振る舞うものなのかもしれません。
笑顔の裏に隠された4年間の孤独――。自分の子どもがいじめを受けて苦しんでいることに気がついたとき、本人や学校、いじめをする子どもに、あなたはどう向き合うだろうか。