当事者同士の話し合いで、いじめ疑惑は解決したと先生。しかし母親に見せた娘の作り笑顔により不安が深まる【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/6/15

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 ハルコが笑顔で通う学校は、実は孤独な闘いの場だった。娘のハルコが学校でいじめられているという噂を、息子のフユタがナツミに話すところから物語が始まる。娘の様子を見ていくうちに疑念は確信へと変わっていき、そして徐々に、加害者と被害者の境界が揺らいでいく複雑な事態であることがわかっていきーー。娘が学校で受けているいじめと向き合う家族の奮闘を描いたコミックエッセイ『家族全員でいじめと戦うということ。』(KADOKAWA)。著者であるさやけんさんにお話を伺った。

 担任が設けたクラスメイトとの話し合いで、ハルコは皆の前で謝罪しその場では解決した形に。しかしハルコが本当に悪口を言ったのか、なぜそれが問題化したのか肝心の理由はわからないままだった。違和感が拭えず問いかけるナツミに、ハルコは「もう心配しないで」と作り笑顔を見せる。

――ハルコはナツミにこれ以上いじめについて追求しないよう牽制を見せますが、この時点でのハルコにとって「家族」はどんな存在だったと思いますか?

「唯一笑える場所」であった家の空間にまで「いじめられている現実」を持ち込みたくない、というのが大きいと思います。

家にいるときだけは、いじめられてなどいない普通の子ども、笑顔の自分でいたかったのではないでしょうか。

――あえて描かなかった人物はいますか?

いじめに関わった人物は、作中では4、5人程度に描かれてはいますが、実際には学年の半数以上、性別関わらず多かれ少なかれ何らかの形で加担していました。

物語の構成上、クラスでのいじめの詳しい内容はほとんど描いていませんが(一部イラストのみで描いている場面もあります)、無視やからかいのみではありませんでした。

――いじめの実態を両親が把握するまで誰も味方がいなかったので、父親であるアキオの冷静さがナツミとの補完関係にもなっていて印象的でした。意識されていたのでしょうか?

ナツミが感情的になり、自分を責め、冷静さを失いつつある中で、夫のアキオの存在がなければ我が子を想うあまり暴走してしまっていたのではないかなと思います。

けれどもそれが、本当に我が子のためになるのかどうか。

アキオの存在は、いじめ問題に対して「親はどうあるべきか」を考える最も重要なきっかけを与えてくれていると多います。

 笑顔の裏に隠された4年間の孤独――。自分の子どもがいじめを受けて苦しんでいることに気がついたとき、本人や学校、いじめをする子どもに、あなたはどう向き合うだろうか。

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