登校しようとした玄関で突然立てなくなってしまった娘。その原因はケガなどではなく、心にあった…【漫画家インタビュー】

マンガ

公開日:2025/6/19

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 ハルコが笑顔で通う学校は、実は孤独な闘いの場だった。娘のハルコが学校でいじめられているという噂を、息子のフユタがナツミに話すところから物語が始まる。娘の様子を見ていくうちに疑念は確信へと変わっていき、そして徐々に、加害者と被害者の境界が揺らいでいく複雑な事態であることがわかっていきーー。娘が学校で受けているいじめと向き合う家族の奮闘を描いたコミックエッセイ『家族全員でいじめと戦うということ。』(KADOKAWA)。著者であるさやけんさんにお話を伺った。

 学校に行こうとした玄関で突然、立ち上がることができなくなってしまったハルコ。ケガはないため、医者の見立てによるとストレスによる心因性の症状が出たと考えられるとのこと。そして心療内科で診てもらうよう勧められる。

――このエピソードで弟のフユタが立てなくなった姉の異変に気づきますが、彼が物語に与える役割についてどのようにお考えでしたか?

フユタは物語冒頭では無邪気な存在で描いてはいますが、フユタのひとことがなければ、ナツミがいじめ問題に気がつくのはもっとずっと先だったと思います。そしてお話が進んでいく中で、家族がこの問題と向き合う大きなきっかけになるような行動をしたりもします。

フユタの存在は、この物語においては「親子」だけでなく、「きょうだい」も大切な家族の一員だということを伝える役割だったのかもしれません。

――ハルコが立てなくなってしまう場面が胸を打ちます。読者に伝えるため、どのような演出を意識されましたか?

立てなくなるほど追い詰められても、普通を装おうと懸命なハルコの気持ちや隠れた本心を、読者の方が想像できるよう表情やセリフに気を配りました。

――親としてできることが少ないと無力さを感じている人もいると思います。そのような読者に伝えられるとしたら、どのような声をかけますか?

すぐには良い結果を得られないことがあったり、なかなか解決できない問題が目の前に現れたとしても、我が子の気持ちや未来を大切に思う気持ちがあれば、どれだけ回り道になったとしても、きっとナツミたちのように乗り越えられる、そう伝えたいです。

 笑顔の裏に隠された4年間の孤独――。自分の子どもがいじめを受けて苦しんでいることに気がついたとき、本人や学校、いじめをする子どもに、あなたはどう向き合うだろうか。

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