子ども同士のトラブルへの適切な対応とは? 子どもの様子が普段と違うと感じたら…【心理カウンセラー・白目みさえさんインタビュー】

マンガ

公開日:2025/6/8

 もしも、子どもが意地悪をされたら? 友達同士のトラブルにどこまで親が介入していいのだろう。小学校に入学したり、学年が上がり子どもたちの交友関係が広がると出てくるこうした悩み。子どもたちとの適切な距離感に悩む親も多いといいます。

 親からほったらかしにされている子ども、いわゆる「放置子」との関係に悩む母親の姿を描いた『放置子の面倒を見るのは誰ですか?』(白目みさえ:漫画、今西 洋介(ふらいと先生):監修/KADOKAWA)の著者であり、臨床心理士・公認心理師の白目みさえさんに話を伺いました。

advertisement

――『放置子の面倒を見るのは誰ですか?』の主人公の娘・莉華は、学校や学童で友達から嫌がらせをされていても、自分から母親や家族に助けを求めることはありませんでした。同じように、子どもから親に相談するようなことがなくても、些細な変化に保護者が気づくことがあるかもしれません。子どもがいつもと違う様子を見せたときにどう行動するのがよいのでしょうか? 見守るべきですか? それとも積極的に原因を探るべきでしょうか?

白目みさえさん:ご質問ありがとうございます。

 莉華は、学校や学童で嫌がらせを受けていましたが、親子関係が悪くないにもかかわらず、最初は自分から家族に助けを求めませんでした。母親のしずかも「どこまで学校に訴えて良いものか」と悩んでいましたが、莉華本人も「これは相談すべきことなのか?」がわからなかったのかもしれません。

 実際、子どもは言葉で「つらい」「助けて」とは言えないことがよくあります。そんなときに保護者はどんな風に関わっていけば良いのか。そんなときの関わり方を3つの視点から考えてみたいと思います。

1.「なんとなく変かも?」の違和感を見逃さない

 いわゆる“親の勘”です。心理士の言うことが「勘かい!」と思われるかもしれませんが、この“勘”侮ることなかれなんです。“勘が当たる”現象には、いくつかの心理学的・神経科学的な背景があり、単なる偶然ではなく、脳の情報処理の結果として説明できることも多いと言われています。

 その中でも“親の勘”に関係があると思われるのは、〈言葉以外の情報〉と〈経験値〉です。表情や声のトーン、雰囲気などの〈言葉以外の情報〉は、意識していなくとも無意識に脳が情報を記憶しています。「ん?」と思った瞬間には“いつもと違うなにか”をキャッチしているといえるでしょう。

 また、たくさんの子どもを育てたことはなくとも、自分の子に関して親は誰よりも多くの情報を蓄積しているはずです。体調が悪くなると二重になるとか、頭をかきはじめるとストレスが溜まっているとか。その過去の〈経験値〉が瞬時に脳内を一瞬で駆け巡り「なんとなく変かも?」の違和感につながります。

 親の感じた「なんとなく」は当たることが多いです。子どもはストレスがあってもうまく言語化できません。体調不良や子どもの変化に現れることが多いので、“親の勘”が発動したときは、少し注意してみてください。

2.事実確認より“安心”が優先

 子どもに元気がなければ、学校から泣いて帰ってくれば、一刻も早くその状態を解決するために事実確認をしたくなる気持ちは理解できます。でも、「なにがあったの」「なんでそうなったの」「いつからなの」と事情聴取さながらに取り調べられてしまうと子どもは身構えてしまいます。親側は子どもの味方をしていたいと思っていても、取調室の刑事のようでは、子どもは素直に本音を話すことができません。

 この場合大切なのは事実確認より“安心”を感じてもらうこと。「元気ないね」「おいでーよしよし」「いつでも話聞くからね」と話しやすい空間を作ることが優先です。

 大人だってショックなことがあれば、すぐに事情説明はできませんよね。また頭ごなしに否定してくるような人には相談したくないものです。

 子どもも同じでひとしきり泣いて、じっと黙って頭を整理して、「よし…話してみようかな」と思えたときに、自分に関心を向けてくれて話を聞いてくれそうな大人の存在を思い出すことが心の支えになります。

 今すぐ話してくれなかったとしても、しばらくは待ってみましょう。大人の方がソワソワし過ぎないように、お花でも生けていてください。少し余裕があるように見えると思います。

3.見守るだけで終わらない

 もちろん、ただ花を生けながら待っているだけでは、生花の腕は上達するかもしれませんが、その間に子どもの状況が悪化してしまうこともあります。

 たとえば、莉華のように学校や学童でのトラブルが続いているようなら、担任や指導員にさりげなく様子を確認することも必要です。事実確認ができていなくとも「子どもの様子が少しおかしい。学校でなにか気になることはありませんか?」と尋ねてみるだけでも、先生たちが注意して観察してくださるようになるでしょう。作中にもありましたが、特に学年が上がってくると先生たちに隠れて悪さをするようになる子もいますので、見張りの目を強化するだけでも解決することがあります。

 このように、相談しなくとも見守ってくれている人がいる、解決してくれそうな大人が周りにいる、という環境を作ることで、いざ相談したくなったときに子どもが一歩を踏み出しやすくなります。

 見守る姿勢は大切にしつつも、それだけで終わらず少しだけ動いてみることも大切です。

 子どもは、どんなに苦しい状況でも「大丈夫」と言ってしまうことがあります。親からすると「信頼してくれてないのかな」と感じてしまうかもしれませんが、子どもは子どもなりに「心配をかけたくない」「うまく言葉にできない」などの理由を心に秘めています。

 だからこそ私たち大人は、変化に気づこうとしたり、いつでも味方であり話を聞く準備ができていることを伝え続けていき、子どもに「ひとりじゃない」と感じてもらうことが大切です。その安心感や支えられている感覚が、子どもの回復力や自己肯定感にもつながっていくでしょう。

取材=ダ・ヴィンチWeb編集部

あわせて読みたい