実妹と夫の不倫写真に隠された驚きの真実とは。不倫モノの枠を超えるヒューマンサスペンス【書評】
公開日:2025/6/20

コミックエッセイや恋愛モノの人気ジャンルでもある、男女の浮気・不倫話。ついつい先が気になって読んでしまう…という人も多いだろう。
その中でも、最近は単なる恋愛のいざこざでは終わらない、一筋縄ではいかないようなストーリーを描いた作品も登場しつつある。『夜顔 私が知らない、夫の秘密。』(さぶれ:原作、空白:漫画/KADOKAWA)も、シンプルな男女の泥沼劇に留まらない人間模様を描いたマンガのひとつである。
本作の主人公・都築夏菜はいわゆるサレカノ体質。これまでもたびたび男性に裏切られた経験があったが、付き合って3ヵ月のスピード婚をした夫・敏行は、それでも確かに自分の事を愛してくれていた…はずだった。
ある時からふと夫に覚えるようになった違和感。不安を感じ始めた夏菜の元に届いたのは、既婚者である実妹・深冬と敏行が仲睦まじい様子で町を歩く姿を映写した1枚の写真だった。夫の不倫を疑い、浮気調査を始めた夏菜。だがそんな彼女が辿り着いたのは、想像を超えた驚きの真実で――?
作品の読みどころのひとつともなるのが、単純な不倫モノで終わらない想定外のストーリー展開だろう。
“信頼していたはずの夫に裏切られた”というシンプルな夫婦の浮気エピソードかと思いきや、物語はどんどん複雑な人間模様を描くサスペンスの様相を帯びてくる。その重要な鍵ともなってくるのが、夏菜が抱いた夫への違和感だ。
展開が進むにつれ、夏菜の妹・深冬とその夫である宗一郎、そして夏菜の元カレ・康太までがこの泥沼劇の当事者となっていく。物語にしっかりとした深みを感じる点も、本作の特徴である。
愛する夫へ感じた違和感の正体は、はたして一体何なのか。不倫疑惑を抱えた夫婦の関係は、その後どんな結末を迎えるのか。一度触れれば、その展開から目を離せなくなること間違いなしの1冊だ。