どこまでが虐待? まだ言葉の意味がわからないような子どもに母親が怒鳴ってしまう心理【著者インタビュー】
公開日:2025/6/26

漫画家・あさのゆきこさんのブログで2022年から連載され、今年になってから書籍化されるなど、育児中のママを中心に評判を呼んでいる『これって虐待ですか 自己肯定感が低くて怒りを止められなかった私が息子と一緒に笑えるようになるまで』(あさのゆきこ/KADOKAWA)。
「私ってポンコツな母親だ…」と思うからこそ完璧を目指し、自分に自信が持てないまま、初めての子育てに苦戦する主人公のみずき。うまくいかない毎日にイライラして子どもに怒りをぶつける場面では、思わず目を覆うような描写も…。その一方で、あることをきっかけに子どもと向き合い、穏やかな毎日を取り戻そうとする姿に勇気をもらえます。創作漫画でありながら、自身も似たような経験をしたというあさのさんに、子育てのリアルな悩みについて聞きました。
――ついイライラして「あんたなんか知らん!」「バカなの!?」と子どもを激しくなじってしまい、「殴ってないからセーフ」「言葉の意味もわかってないさ」と思った後に「セーフ…なわけない」「心にきっと傷が残る」と泣く主人公の姿が印象的でした。子どもを怒ってしまった後の深い反省とどうしようもない大変さが同時に伝わって、自分を見ているような気持ちになる読者も多いと思います。
あさのゆきこさん(以下、あさの):私自身も「バカ」とは言わないけど、「来ないでって言ってるでしょ」とか「なんでわからないの」みたいなことを方言で怒鳴ってしまったのを覚えています。そんなこと言ってもまだわからない年齢だったんですけど…。でも、子どもは怒られたことを察知して泣きますよね。叩いたら明らかに虐待だけど、怒鳴ったりモノに当たったりすることも虐待になるそうです。カッとなって、イライラを子どもにぶつけてしまったり、今のはひょっとしたら虐待だったのかも…と思ったことが何度かありました。
――作中では、子どもがトイレまで後追いしてきた時に怒鳴っていました。自分の時間が取れないことがイライラにつながることもあったのではと。
あさの:自分の時間は子どもが寝ている時くらい。早く寝てほしいのに子どもがなかなか昼寝してくれなかったりして。特段寝ない子だったわけではなく、自分のキャパシティが小さかったなと感じています。
――主人公は子どもにたくさん食材を食べさせたり、子どものためのイベントにも足を運んだりして、母親としての役割を完璧にこなそうとする気持ちが強い分、無理をしていたようですね。
あさの:主人公は専業主婦だから子育てくらいちゃんとやらなきゃと思って行動していますが、私自身はちょっと違っていました。子どもが産後に仮死状態になり、後遺症が残ったらどうしようと思って、他の子と遜色ないように育てなきゃと思い詰めていた時期もあったんです。完璧にこなそうとして、まだ言葉がわからない子どもにずっと話しかけたり、気が乗らないのに「子どものため」と外に出かけたりして。でも、親子遊びのようなイベントはまったく楽しくなかった。そう考えてしまう自分にも「お母さんになりきれていない」と感じて落ち込んでいました。
取材・文=吉田あき