「自分はポンコツだから親に向いてない」小さい頃から、母親に否定され、先回りされた結果…【著者インタビュー】
公開日:2025/6/30

漫画家・あさのゆきこさんのブログで2022年から連載され、今年になってから書籍化されるなど、育児中のママを中心に評判を呼んでいる『これって虐待ですか 自己肯定感が低くて怒りを止められなかった私が息子と一緒に笑えるようになるまで』(あさのゆきこ/KADOKAWA)。
「私ってポンコツな母親だ…」と思うからこそ完璧を目指し、自分に自信が持てないまま、初めての子育てに苦戦する主人公のみずき。うまくいかない毎日にイライラして子どもに怒りをぶつける場面では、思わず目を覆うような描写も…。その一方で、あることをきっかけに子どもと向き合い、穏やかな毎日を取り戻そうとする姿に勇気をもらえます。創作漫画でありながら、自身も似たような経験をしたというあさのさんに、子育てのリアルな悩みについて聞きました。
――主人公は小さい頃から母親に否定され、先回りされて育ったために、自己肯定感が下がってしまった女性です。ご自身に重なるところもありますか?
あさのゆきこさん(以下、あさの):主人公ほどではないですが、子どもの頃、母親から「頼りない」と思われているだろうなと感じていました。実際に言われたこともあります。でも、それくらいはよくあることだと思っていました。
――学生時代や社会人になってからも自己肯定感の低さを感じることはありましたか?
あさの:学校のクラス内でも地位が低いと感じることがありました。就職活動でも「私なんかが受からないだろう」と思っていたし、就職氷河期だったから実際に受からず、それでまた自己肯定感が下がったりとか。漫画を描いていても、私よりうまい人はいっぱいいると感じてしまう。自分の価値を低く見積もり、チャレンジできずにいることは多いような気がします。
――お母さんから、「頼りない」ではなく、どんな言葉をかけてほしかったですか?
あさの:「頑張っているね」とか「そのままでも十分頑張ってるね」とか、そういう言葉をかけてほしかったです。
――主人公は、子どもが小さい時は「子どもが評価されると自分の評価が上がる」と考えていましたが、子どもが育ってからは周りの評価があまり気にならなくなったようです。自己肯定感が上がることはないかもしれませんが、他に目を向けるのはいいかもしれません。
あさの:私も以前は、子どもが「いい子ね」と褒められたら自分も褒められたような気持ちになりましたが、今ではその頃の気持ちが少しずつ昇華されている気がします。ただやっぱり根本の自己肯定感は、いろんな自己啓発本も読みましたけど、なかなか上がらなくて。家のこと、親のことなど、悩むたびに自信のなさに惑わされて、一生付き合っていくんだろうと思います。親が亡くなって子どもが育ちきったら、やっと心安らかに過ごせるのかもしれません。
取材・文=吉田あき