上手に生きられなくても大丈夫。そんな毎日も愛おしく思える夫婦のほのぼの暮らし【書評】

マンガ

公開日:2025/7/29

 生きていれば、特別な日もあれば、ただ坦々と過ぎていく日もある。『あのね、今日はこんなこと あめのはちのほのぼの日記』(あめのはち/KADOKAWA)を読むと、なんでもない日常が、どれほど尊く愛おしいものかに気づかされる。ほんわかした絵柄とやわらかな語り口で綴られる作者と夫の日常には、自然と頬が緩む温もりがある。忙しない日々に疲れている人や、癒しや優しさを求めている人にこそ、読んでほしい一冊だ。

 本作は、作者・あめのはちと、大好きな頼れる夫との暮らしを綴った日常エッセイである。作者の周りで日々起こったことや些細な感情の機微までを丁寧に描いている。その日常に大きな事件は起こらない。何気ない一言や、休日の散歩、おうちで映画を観ながら夫を好きだと実感する日々。仕事中のふとした発見や、道で見かけた素敵な出来事。時にクスッと笑ったり、「あるある」と共感したり、優しさに涙したり…読み進めるうちに、読者自身の毎日にも優しい光が差し込んでくるような感覚を覚える。

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 どのエピソードにも人を思う気持ちや、周りの人々へのまっすぐな愛情が滲んでいる。そんな作者と愛する夫との出会いや恋の始まり、結婚に至るまでのエピソードはもちろん、学生時代の友人との思い出や、時に苦しさを覚える家庭環境の記憶までが率直に語られる。過去の傷を抱きながらも、作者が今幸せに暮らしているのは、いつだって人とのつながりや、自分自身の気持ちを大切にしてきたからなのだろうと、自然と納得できる。

 何気ない日常の中にも、たくさんの愛や優しさがある。それを見つける目と、素直に表現する心を持つ作者の視点は、読む人の心にも、そっと優しさを運んできてくれる。今日がどんな一日だったとしても、「それでいい」と思わせてくれる。読者の心にそっと寄り添いながら、生きることの幸せや楽しさを与えてくれるような作品だ。読み終えたとき、人生が今より少し楽しく感じられるはずだ。

文=ネゴト / fumi

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