ハイテンションギャルが釣りオタクにグイグイくる! 釣って楽しい、食べて美味しい、新感覚グルメ&ラブ?コメディ『釣って食べたいギャル澤さん』【書評】

マンガ

PR 公開日:2025/7/17

釣って食べたいギャル澤さん
釣って食べたいギャル澤さんふなつかずき/集英社

「オタクに優しいギャル」というマンガやアニメなどで最近多く見られる設定がある。これはすでにネットミームや多くの作品の要素になっているのでご存じの方も多いだろう。

釣って食べたいギャル澤さん』(ふなつかずき/集英社)は、そんなギャルの春澤祭(はるさわまつり)と、釣りオタクの釣谷一尋(つるやひとひろ)の物語。春澤は釣谷に興味を持ち、ふたりは釣りと料理を通じて仲良くなっていく。

 作品の魅力は、まずは明るくサービス精神にあふれたギャル澤さんのかわいらしさ。さらにそんな彼女のビジュアル、釣りのリアリティ、そして釣った魚の料理とそれに合わせる酒の詳しい解説が、著者のふなつかずき氏の高い画力によって表現されているところだ。

 ストーリーは、心穏やかに一人で釣りを楽しむのが好きな釣谷が、釣り船でハイテンションなギャルと出会うところから始まる。

釣り船で出会ったのは、その場にふさわしくないギャル!?

 社会人3年目、24歳の釣谷は人付き合いが苦手な、いわゆるコミュ障で陰キャ。彼は仕事の疲れやストレスを唯一の趣味である釣りによって解消していた。

 ある週末、釣谷は鯛を釣るための釣り船でゴリゴリのギャル・春澤祭と出会う。春澤はなぜかセクシーな水着を着て乗船しており(水着での釣りは危険なため真似しないように!)、テンション高く釣谷にガンガン話しかけてきた。釣谷は彼女に辟易しながらも、初心者だという春澤に釣り方を教える。「釣り…!!! たのし──っ!!!」と盛り上がる彼女のために、釣果の鯛を締める作業まで手伝う。

 数日後、釣谷は春澤と再会した。彼女は釣谷の勤務する会社に中途入社してきたのだった。なお制服はとりあえず着ているものの、釣り船で会った時と同様にギャル要素満載。さらに聞けば、春澤は社長の娘でもあった。

「また会えたなんて運命だね!」と嬉しそうにはしゃぐ彼女は、釣谷との距離をさらに詰めてくる。実は釣り船で彼女とのあるハプニングで弱みを握られている釣谷は、春澤に釣りと魚の捌き方と料理を教える約束をさせられ、彼女は釣谷の釣りに、毎回ついて来るようになる。

 こうしてギャルと釣り好き地味男子の週末釣りライフが始まった。

釣り好き男子による魚料理と酒のマリアージュに、ギャル悶絶!

 釣谷は釣り歴10年以上。もちろん釣りの知識もスキルも高いがそれだけではない。釣った魚の処理から、調理、食べ方まで詳しい。例えば、鯛を釣ったらすぐに締め、しっかり下処理をして見事に焼き上げる。これはもちろんおいしいが、さらに別の鯛を丁寧に処理して冷蔵庫で数日寝かせ、彼の家を強引に訪れた春澤に振る舞った。そのプリプリ食感と濃厚な味わいは、彼女のテンションを「爆アゲ」するのだった。

 実は釣谷の実家は酒屋で、魚料理とペアリングさせる酒の知識も豊富で、寝かせた鯛に合わせた純米大吟醸の爽やかで華やかな甘い香りと鯛の風味が相まって、春澤は大感激する。そんな感じで釣谷は釣った魚を料理するたびに、それに合う日本酒やワインなども紹介するので、読めば間違いなく味わいたくなるはずだ。

 さて、春澤はいわゆるギャルらしく、いい意味で遠慮のない真っ直ぐな考え方と生き方をしているので「僕は釣りも料理も趣味レベルで特技って言える程でもない」などと卑屈な釣谷にこう言うのだ。

自分で捕って自分で捌いて料理して食べる!
それってひとりで生きられるってことやん!
それって超ワイルドやん!
が~ちゃ~(ガチ)カッコイイ!!

 こんな釣り好き男子に優しいギャル(というか釣りが大好きなギャルだが)が仲良くしてくれれば、嫌でも意識してしまいそうだ。しかし、ふたりはなかなかいい雰囲気にはならず釣り友達として関係が続く。

 ただ、いつも一緒に釣りに行き、時には(料理をするために)お互いの家へ行き来するふたりを、周囲はただの友達とは思ってはくれない。だから春澤の父親や友人、そして会社の同僚たちに圧をかけられることで……。

 釣りとグルメの知識が満載かつ、ギャルとオタクの恋愛要素も加わった本作。尖っているように見えて、実は読み手を選ばない懐の広さと面白さがある。

文=古林恭

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