人望は才能ではなく、習慣で身につく!? 渡邉恒雄、安倍晋三、EXILE…… 政財界から芸能界まで多くの著名人と親交のある著者が教えるその方法とは?【書評】

ビジネス

PR 公開日:2025/7/4

人望という技術 カーネギーに学ぶ人に好かれる習慣
人望という技術 カーネギーに学ぶ人に好かれる習慣一木広治/主婦の友社

 人望がほしい——ふと、そんなことを思ったことはないだろうか。人間関係で物を言うのは、何よりも人望。特にビジネスの場では、どんなに合理的な提案をしても受け入れられるとは限らないし、どんなに正しいことを言っても、相手が聞いてくれるとは限らない。いい信頼関係を築き、「この人となら」と思ってもらえないと、何事もうまくいかない。
 
 そんな人望を集める力は、社交的な性格の人だけが持つものなのだろうか。いや、そうではない。人からの信頼を集めるコミュニケーション術を身につけたいならば、『人望という技術 カーネギーに学ぶ人に好かれる習慣』(一木広治/主婦の友社)が強い味方になるだろう。渡邉恒雄、安倍晋三、工藤公康、EXILE、水野正人、宇野康秀、小池百合子……政財界から芸能界まで多くの著名人と親交を持ち、その人脈を生かして早稲田大学で「起業特論:トップリーダーズマネジメント」の教鞭をとる一木広治さんが、この本では人から信頼を得るための方法を教えてくれる。

コミュニケーション力はトレーニングすれば誰でも身につけられる

 一木さんによれば、コミュニケーション力は、生まれつきのものではなく、トレーニングさえすれば、誰でも身につけることができるのだという。

 本書では、一木さんが名だたるレジェンドと交流した経験談をまじえながら、D・カーネギーの『人を動かす』という歴史的名著をひもといていく。ページをめくるたび、唸らされてばかり。信頼関係を築く「はじめの一歩」から、自然と人が集まるチームのつくり方、人との関係を継続させる技術まで、そのポイントはとにかく分かりやすいのだ。

正論ではなく感情。ポジティブなコンセプトが人を動かす

 たとえば、D・カーネギーは『人を動かす』のなかで、「人は正論ではなく、感情で動く」ということを繰り返し強調して述べているが、それだけを聞いても当たり前のことのように思うかもしれない。だが、東京2020オリンピック・パラリンピック招致委員会で、事業広報アドバイザーを務めた一木さんが経験とともに語れば、そこには納得感が生まれる。オリンピック招致にあたっては、「東日本大震災の復興が先ではないか」「巨額の費用に見合うのか」といった声が上がったが、そんななかで感じたのは、ポジティブなコンセプトの重要性。

「開催のメリット」をぶつけるのではなく、「それでも挑戦する理由」や「誰もが未来に希望を持てる舞台をつくる」といったポジティブな未来像を語ることのほうが、強い共感を得たのだという。批判や危機感を前面に出したメッセージは、たとえ正しくても、相手の心にブレーキをかけてしまう。たとえば、「若者の政治離れが深刻だ」という言い方ではあきらめに近い気持ちを呼び起こすが、「若者と政治をもっと近づけたい」という表現に変えてみたら聞く人の心に「そのためには何ができるだろう」と考える余白を与える。ポジティブなコンセプトは多くの人を惹きつけるのだ。

 D・カーネギーの言葉は面白い。『人を動かす』のなかで次のように語っている。

「私はイチゴ・クリームが大好物だが、魚は、どういうわけかミミズが好物だ。だから魚釣りをする場合、自分の好物のことは考えず、魚の好物のことを考える。イチゴ・クリームを餌に使わず、ミミズを針につけて魚の前に差し出し、『一つ、いかが』とやる」

「自分の息子に煙草を吸わせたくないと思えば、説教はいけない。自分の希望を述べることもいけない。その代わりに、煙草を吸う者は野球選手になりたくてもなれず、百メートル競走に勝ちたくても勝てないことを説明してやるのだ」

 そんな言葉にハッとさせられ、加えて一木さんの経験談が語られれば、「なるほど」と思わされる。「強みよりも悩みが人をつなぐこともある」「相手の“光”に気付き、言葉にする」「興味の矢印を相手に向ける」「『教えてください』は魔法のことば」「時間と手間をかけると人間関係のタイパがあがる」……。どれも当たり前のことのようだが、対人関係においてそれを意識できている人はどのくらいいるのだろう。そう考えるにつれて、「人望は才能ではなく、習慣で身につく」ということを実感する。そして、すぐにでも、この本で学んだポイントを生かしてみたくなるのだ。

 仕事での人間関係が難しいと感じている人は少なくないだろう。AIに仕事を奪われるといわれる時代だからこそ、人と人との信頼関係を築くスキルは、これからますます重要になるに違いない。ビジネスマン必読の1冊だ。

文=アサトーミナミ

あわせて読みたい