「とにかく癒される」と話題沸騰中! 思い切り泣けなくなった大人のあなたへ――猫とペンギンの温かな友情から学ぶ“私の労わり方”【書評】

文芸・カルチャー

PR 公開日:2025/7/3

君がいるから
君がいるからまなつ&まふゆ/大和書房

 休んでいるはずなのに、心や体が軽くならない。忙殺される日常の中で、そう心が悲鳴を上げた時、ぜひ手に取ってほしい本がある。それは、いま話題沸騰中のメッセージブック『君がいるから』(まなつ&まふゆ/大和書房)だ。

 著者は、フォロワー10万人超えの人気イラストレーター。本作は2023年12月に発刊された後、じわじわと人気が高まっていき、現在ではなんと13刷6万部を突破した。丸善ジュンク堂書店では2025年5月に「芸術」ジャンルで1位を獲得。三省堂書店の「文芸ノンフィクション」ジャンルでは7位に輝いたこともある。

 なぜ、こうした現象が起きているのか。それは、本作に詰め込まれた優しいメッセージやほんわかとしたイラストが、疲れ切った心に刺さるからだ。

覆い隠してきた涙や痛みを見透かされているかのような気持ちに

 本作は、表紙のイラストからして温かい。椅子をひとつ空けて、泣いているペンギンにミルクを差し出す猫の不器用な優しさに、つい目尻が下がる。

 ふたりは一体、どんな関係なのだろう。そんな疑問を持ちつつ、読み手は癒しの世界へ。すると、そこに広がるのは想像していた以上に自分の心と対峙させられるメッセージの数々。文字を目で追っていると、自然と涙がこぼれる。

 例えば、いつの頃からか泣けなくなった人の涙腺を刺激するのが、このメッセージ。

“ねえ、大人が赤ちゃんのように泣かないのは大きくなって、強くなったからじゃなくて、思いっきり泣けるような安全な場所がなくなったからなんだ。”

ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_12
ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_13

 この言葉に、私はドキっとした。「大丈夫」という言葉で覆い隠してきた涙や痛みを見透かされたような気がしたからだ。

 年を取ると涙もろくなるとは言うが、大人になるほど、人は自分のことで泣く機会が減るように思う。泣きたい感情をグっと噛み殺し、平気なフリが上手くなるほど、わんわんと泣けていた“いつかの自分”が恋しくなる。

 本書は、そんな言語化しにくいもどかしさや叫び、痛みを受け止めてくれる作品だと感じた。

ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_22
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ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_27

「本当の私」って、一体どんな形だっただろう。思わず、そう考えこんでしまった。

 また、グラつく心や、鞭を打ってなんとか動かしている体を気遣う温かいメッセージも多数綴られているからこそ、「自分が生きる意味」を見つめ直したくもなる。

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ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_11
ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_38
ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_39

「自分が望む生き方」を考えるきっかけになる1冊

 日常は、ささやかな違いしかない“代わり映えのない日々”だ。だから、ふとした瞬間に思うのだろう。自分はなんのために生きているだろうか、と。

 その答えは自分自身で見つけるしかないから「生きること」は難しいのだが、本作は”自分らしいアンサー”に辿り着く手助けをしてくれる。優しくも深いメッセージを読み手に投げかけ、「自分が望む生き方」を様々な角度から考えるきっかけを作ってくれるのだ。

ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_60
ダ・ヴィンチ 君がいるから_ページ_61

 読後はきっと、“いつもの日常”の見え方が変わることだろう。

 なお、本作の終盤では、ペンギンと猫の意外な生い立ちが明らかに。ふたりのバックボーンを知ると、本作は「大人の絵本」のように楽しむこともできる。ラストのページでふたりの過去を知った後には、ぜひもう一度、最初のページを読み直してほしい。きっと、メッセージの深さがより染み、最初に読んだ時とは違う涙が流れることだろう。

 年齢や手に取った時の心理状態などによって響くメッセージが変わる本作は読む人の数だけ解釈がある、奥深い一冊である。人生の選択に悩んだ時や自分に嫌気がさした時、日常に味気なさを感じた時など、様々な悩みに対する温かいエールが綴られているので、何度でも開きたくなってしまう。

 日頃、頑張っている自分へのご褒美にするのはもちろん、大切な人にプレゼントするのもおすすめだ。ぜひ、心がこもったあとがきまで読み込み、この優しい世界観に癒されてほしい。

文=古川諭香

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