ある日突然、推し俳優のマネージャーに？完全に両片思いの2人の禁断の恋を描く『ウチの万李がお世話になります』【書評】

公開日：2025/7/4

　ある日突然推しのマネージャーをすることになって…!?　そんな芸能界を舞台にしたラブストーリー『ウチの万李がお世話になります』（海道ちとせ/白泉社）の第3巻が7月4日に発売される。

　主人公である女子大生・明石七星（あかしななせ）は、芸能事務所の社長を務める姉から人気俳優・成田万李（なりたばんり）の期間限定マネージャーを依頼される。成田万李と言えば今最も旬な俳優で、理想の彼氏とも言われる存在。大喜びで引き受けた七星だが、出会ってすぐに万李の裏の顔が判明。さわやか好青年は表向きのキャラクターであり、本当の万李はわがままで自分勝手、マネージャーをこき使いまくり＆暴言浴びせまくりのドS人間だった。

　しかし仕事には一切手を抜かない万李を見て、期間限定ながらも全力サポートを誓った七星。最終的には万李に気に入られ、その後もインターン生として引き続き万李のマネージャーをすることになる。

ドS俳優×不屈のマネージャーコンビがパワフル！

　本作の魅力は間違いなく万李×七星ペアの仕事に向かう情熱にある。マネージャーに暴言を吐きまくるドSだけど仕事への熱量は120％、俳優という職業にすべてを注ぐ万李。第一印象は最悪だったものの、万李に感化されてインターンながら全力で仕事に取り組む七星。そんなふたりの“お互いがいるからこそ頑張れる”という関係は仕事仲間として理想そのもの。読んでいるこちらも元気にしてくれるパワフルさが魅力なのだ。

　一方恋愛面は、読者から見れば「完全に両片思いでは……？」という描写がありながらも進展せぬまま。しかし第3巻はついに今後の物語の核心とも言える「マネージャーと俳優が恋愛していいのか？」という問題に切り込んでいく。

お互いを意識し始める“恋の始まり”に悶える

　とある人からの言葉で、自分の気持ちが推しへの“好き”から、成田万李その人自身への“好き”に変わってしまっていることに気づく七星。これまではイケメン俳優でも関係なく強気のコミュニケーションを取っていたのに、気持ちに気づいてからは不自然な態度を取ってしまう。そんな七星の初恋への戸惑う気持ちがかわいい！　意識すればするほどうまく振る舞えない…そんな自分の初恋を思い出し、ときめいてしまうこと間違いなしだ。

　一方さすがに七星の気持ちに気づいた万李。もちろんイケメン俳優に熱愛はご法度だが……!?　これまで人気俳優であるために表の顔を崩さなかった万李。そんな彼が慌てるのは七星に関することばかりだった。ドSが裏の顔ならば、それをさらに剥がした先にある特定の人間＝心を許した人間だけに見せる素の優しさこそが万李の魅力だと思う。そう考えると、推しには恋愛してほしくないけど、仕事で疲れた時、誰か心を許せる相手に支えてもらっていてほしい……。仕事とプライベートで葛藤する万李のリアルさに、そんなオタクの身勝手な妄想が爆発してしまった。

　……といろいろ述べてきたが、やっぱり一番の破壊力は万李と七星のキュンシーン！　ピンチに飛んできてくれたり無自覚に焼きもちを焼くシーンもときめくが、演じた役のセリフを言ってきたりと芸能人パワーを駆使して七星に迫るシーンはあざとさ100点超え。