3ヶ月待ちのケーキが無惨な姿に。食に無頓着な男子高校生とスイーツ愛に生きる会社員が紡ぐ、甘く繊細なボーイズラブ【書評】

マンガ

公開日:2025/7/29

おふたりさまパルタージュ』(はしこ/KADOKAWA)は、甘いものが好きなすべての人に贈りたい、心をとろけさせるボーイズラブ・ストーリーだ。物語の中心に据えられたのは、スイーツという“魔法”。ケーキをきっかけに出会ったふたりが、甘く距離を縮めていく過程が丁寧に描かれていく。

 主人公は社会人2年目、仕事もできて頼りがいのある会社員・三日月司帆(みかづきしほ)。彼にとって、日々の疲れを癒してくれるのは、極上のケーキを味わう時間だった。ある日、3ヶ月前から予約していたケーキを手に帰宅中、モデルの男子高校生・日畑夜皓(ひばたけやひろ)と偶然ぶつかり、大切なケーキが無惨な姿に。ショックを受けつつも大人の対応を見せてその場を去ろうとする三日月に、夜皓は「弁償します、ケーキ」と真顔で告げ、お詫びのスイーツ購入をきっかけに交流がはじまる。

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 年上だが感情表現が豊かな三日月と、若いながらも無口で落ち着いた夜皓。味には疎いがスイーツへの愛が深い三日月と、鋭い味覚を持ちながらも美味しいという感覚を知らない夜皓。まるで太陽と月のように正反対なふたりの関係がたまらない。最初は「もっとスイーツを楽しみたい」「芸能活動のために食べる演技を向上させたい」という利害の一致から始まった関係だったが、ともにスイーツを味わうことで、互いの価値観や世界を少しずつ広げていき、惹かれ合う姿が愛おしい。

 やがて明かされるのは夜皓の切ない過去。彼が食べ物に興味を持てない理由がそこにはあった。そんな彼にとって、食べることを真っ直ぐに楽しむ三日月との時間がいかに温かく尊いものかが描かれていく。

 夜皓の強引な好意と、三日月の鈍感さが交錯するなかで、ふたりの関係はどこへ向かうのか…?ケーキのように甘く繊細な関係に、最後までページをめくる手が止まらなくなるだろう。

文=ネゴト / fumi

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