もしかして“老害”? “老害”という言葉で気付いたことと危険性【著者インタビュー】
公開日:2025/7/15

周囲の視線を気にせず怒鳴り散らす、こちらの話を聞かずに古い価値観を押し付ける……。いわゆる“老害”に自分の親がなってしまったら? 自分を育ててくれた大切な両親だったはずなのに、二人の行動を恥ずかしく感じてしまう。しかしこれまでの恩があるから見捨てることもできない。そんな葛藤を感じ、さらには里帰り出産に帰省した娘と両親の板挟みに苦しむ栄子(54歳)の姿を描いたのが『わたしの親が老害なんて』(西野みや子/KADOKAWA)。彼女の気持ちには年老いた親を持つ方なら多かれ少なかれ共感する部分があるのではないでしょうか。セミフィクションである本作を著者である西野みや子さんはどう描いていったのか? 自身の経験を含めお話を伺いました。
――本書は“老害”をテーマにしたセミフィクションですが、本作を描く前は“老害”という言葉にどんなイメージがありましたか?
西野みや子(以下、西野):老害って、言われ始めた頃はTVで“ちょっと変な人”みたいに紹介されることが多かったですよね。接客業の方を困らせるカスタマーハラスメントみたいな感じで。でも老害と言われている方からしたら、自分の若い時には当たり前の常識とされていたことや、自分たちが言われてきたことをそのまま言っているんじゃないのかなと思うんです。と言うのも私は結構な田舎の出身で、一度地元を離れてからまた戻ってきて、しばらく実家暮らしをしていた期間があります。周りにもお年寄りが多いから、昔ながらのことをお説教みたいに言ってくる人も多いということがありました。一度外に出て以降、そういう価値観を押し付けてくるお年寄りとか、そのお年寄りに影響されている母親世代の人から言われていることって今の倫理観で測ると老害の要素が入っているんじゃないかなと思うようになったんです。
――なるほど。具体的にどんなことがありましたか?
西野:そうですね、私自身子どもがいるのですが、妊娠中とてもつわりがひどかったんです。その時も「二人分食べなくちゃ」と言われたり、出産方法について迷っている時も、「帝王切開をした人はちゃんと産んであげられていないって悩んでいるみたいだから普通分娩がいいんじゃない」と言われたり。この本を書くことがそういう風に積み重なってきた違和感を考えるきっかけになりましたね。
――ではそういう身近なところに抱いていた違和感が「この作品を描いてみよう」と思った理由ですか?
西野:そうですね。ただ私自身“老害”という言葉はラベリングというか、物事を単純化しすぎてしまう危険性もあるなと思っていて。“老害”と一言で言ってもその内容はそれぞれだし、読み解いていけばいろいろなタイプがあるのでそこが伝わるように、この言葉を使う時はここぞという時だけにしようというのは気を付けました。
取材・文=原智香