なぜ人は“老害”になってしまうのか? 身近な高齢者と接して感じたことを物語に【著者インタビュー】
公開日:2025/7/16

周囲の視線を気にせず怒鳴り散らす、こちらの話を聞かずに古い価値観を押し付ける……。いわゆる“老害”に自分の親がなってしまったら? 自分を育ててくれた大切な両親だったはずなのに、二人の行動を恥ずかしく感じてしまう。しかしこれまでの恩があるから見捨てることもできない。そんな葛藤を感じ、さらには里帰り出産に帰省した娘と両親の板挟みに苦しむ栄子(54歳)の姿を描いたのが『わたしの親が老害なんて』(西野みや子/KADOKAWA)。彼女の気持ちには年老いた親を持つ方なら多かれ少なかれ共感する部分があるのではないでしょうか。セミフィクションである本作を著者である西野みや子さんはどう描いていったのか? 自身の経験を含めお話を伺いました。
――漫画はスーパーで店員の若い女性に客である高齢男性が怒りをぶつけるシーンから始まります。冒頭のシーンをどうするかはかなり重要だと思うのですが、このシーンにした理由はありますか?
西野みや子(以下、西野):やっぱり“老害”とタイトルにあるのを見て読みに来る方は多いと思うんです。そこでみんながイメージする“老害”な状況がプロローグには来るべきかなと思いました。それにここからは親子・家族の話になるので、その前に“老害”と言われている人に対する世間の視線がどんなものなのかを描いておこうという気持ちもありました。
――今回取材のために調べたら、高齢の方が老害になってしまう理由としては、もともとの性格以外にも耳の聴こえが悪くなったり、脳に経験が蓄積されていく影響だったりもあると知りました。
西野:私もそれは調べました。ただ加齢が原因としてしまうと今回伝えたいことは伝わらないのかなと思って。もちろん加齢もあるけど、本人の性格だったり、親子となるとそれまでの関係性だったりも絡んできて原因は複合的なものになると思うんです。だから個人や関係性の方にフィーチャーした方が、読んでいる方にも自分と照らし合わせていただけるんじゃないかと思って描きました。その分、巻末では医学博士の平松類先生に解説いただきました。
――原因は複合的なものだと感じたのは何か経験があるのですか?
西野:私の祖父が耳の聴こえが悪くなった時、補聴器を勧めたのですが断られたんです。免許返納の時もなかなか受け入れてもらえなくて。その時老いが原因でもあるけど、おじいちゃんって元からこういう性格だったよなとも感じて(笑)。そういう風に自分の周りの高齢の方を見ていて感じたことがベースですね。
取材・文=原智香