「昔と変わっていませんね、いい意味でも悪い意味でも」根性論で説教をしてくる恩師に対して、元教え子が放ったひと言【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/18

店員に理不尽に詰め寄る高齢者が自分の身内だったらどうする? 年を重ねて変わっていく親子関係について描いた西野みや子さんの『わたしの親が老害なんて』

 周囲の視線を気にせず怒鳴り散らす、こちらの話を聞かずに古い価値観を押し付ける……。いわゆる“老害”に自分の親がなってしまったら? 自分を育ててくれた大切な両親だったはずなのに、二人の行動を恥ずかしく感じてしまう。しかしこれまでの恩があるから見捨てることもできない。そんな葛藤を感じ、さらには里帰り出産に帰省した娘と両親の板挟みに苦しむ栄子(54歳)の姿を描いたのが『わたしの親が老害なんて』(西野みや子/KADOKAWA)。彼女の気持ちには年老いた親を持つ方なら多かれ少なかれ共感する部分があるのではないでしょうか。セミフィクションである本作を著者である西野みや子さんはどう描いていったのか? 自身の経験を含めお話を伺いました。

――かつての教え子が、元教員である栄子の父を訪ねてくるシーンが印象的でした。

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西野みや子(以下、西野):知人が教員として働いていた時の悩みを元にして描いています。
生徒に教えたくて教員になったはずなのに、部活指導が大変すぎて授業の準備もままならなかったり土日が潰れたり……。でも年配の先生に言わせると、「昔の方がさらに環境が良くなかった」なんですよね。ベテラン層の先生たちは教育に人生を懸けている方も多いので、そういったジェネレーションギャップをこの元教え子とお父さんに落とし込みました

――中でも「先生は昔と変わっていませんね、いい意味でも悪い意味でも」という教え子のセリフにすごく共感しました。

西野:このセリフは“老害”と呼ばれる人に結構当てはまるんじゃないかと思います。高齢の方でも柔軟で下の世代の話を「こういうのがあるんだね」と面白がってくれる人は“老害”とは言われないと思うんです。でも、このお父さんは自分が正解だと思っているので、相手の意見を真っ向から否定してしまいます。私は一度実家を出て、戻って来ているのですが、そこから周りの価値観に違和感を覚えることが多くありました。この元教え子も昔は先生を尊敬していたし、先生は変わっていないから懐かしい気持ちにもなるんだけど、成長して自分なりの今の価値観で見ると、相手の言動にがっかりしてしまうそんな気持ちから考えたセリフだったと思います。

――そしてこのシーン、お母さんがお父さんの肩を持つのも印象的です。今は熟年離婚という言葉もありますし仲が悪い夫婦もいると思うのですが、栄子の母をこういうキャラクターにしたのはなぜですか?

西野:今回“老害”はおじいちゃんとおばあちゃんのふたりのことを指すわけですが、それぞれ違ったタイプの“老害”を描きたいなと思いました。おじいちゃんは典型的な他者に対して強く出るタイプ。一方でおばあちゃんは「責任を持たないタイプ」。おじいちゃんがいる時は陰に隠れているけど、子育てとか自分のジャンルの話の時はいろいろ言ってくる。「お父さんに聞かないとわからないから…」とか言いつつこちらを抉ってくることは言うタイプですね。

取材・文=原智香

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