大切だと思っていた両親が“自分にとって辛い存在”になる、というテーマを描くために【著者インタビュー】
公開日:2025/7/19

周囲の視線を気にせず怒鳴り散らす、こちらの話を聞かずに古い価値観を押し付ける……。いわゆる“老害”に自分の親がなってしまったら? 自分を育ててくれた大切な両親だったはずなのに、二人の行動を恥ずかしく感じてしまう。しかしこれまでの恩があるから見捨てることもできない。そんな葛藤を感じ、さらには里帰り出産に帰省した娘と両親の板挟みに苦しむ栄子(54歳)の姿を描いたのが『わたしの親が老害なんて』(西野みや子/KADOKAWA)。彼女の気持ちには年老いた親を持つ方なら多かれ少なかれ共感する部分があるのではないでしょうか。セミフィクションである本作を著者である西野みや子さんはどう描いていったのか? 自身の経験を含めお話を伺いました。
――これまで育ててもらった、子育てを手伝ってもらった恩を感じつつも両親を負担に思ってしまう、という栄子さんの気持ちはとても共感する方が多いテーマだと思いました。
西野みや子(以下、西野):私自身もこれを描き終わった後に「私って親や親族に対してすごくしがらみを感じているんだな」と気付いたんです。私自身は祖父母の介護を手伝っていた時期があったんですが、母の代にあたる上の世代があまり祖父母の介護について考えていなくて「一体みんなどうするつもりなんだろう」ってイライラすることがありました。この作品を描く上で自分の状況を振り返った時に、それって家族や親族のために何かしなくちゃという気持ちがすごくある方だからだったんだなって思ったんです。兄弟なんだから、家族なんだから、親族なんだから、同じ地域に住む人なんだから……という価値観で育てられてきたところがあるので、それが当たり前になっていたなと気付きました。
――なるほど。今回老害になるのが栄子の義両親ではなく両親というのは、今おっしゃっていただいたような気持ちを描くためですか?
西野:それもありますし、義両親だと嫁姑問題にもなってきて、老害というテーマと離れてしまうなと。それで言うと、おばあちゃんがお家に来て、栄子の生活を乱してくるというエピソードも考えていたんですが、おばあちゃんが毒親のように見えてしまうかもしれないので、その話は無くすことにしました。毒親でもなく義両親でもない。自分が大切にしたいと思っていた両親が老害になるという話なので、設定や状況でテーマがブレないように、身近に感じられるように一般的で「まったくあり得ない話じゃないな」というラインを描くようにこだわりました。
取材・文=原智香