老害の一歩は価値観の押し付け? 親世代の子育て論を押し付けられてモヤモヤ【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/20

店員に理不尽に詰め寄る高齢者が自分の身内だったらどうする? 年を重ねて変わっていく親子関係について描いた西野みや子さんの『わたしの親が老害なんて』
店員に理不尽に詰め寄る高齢者が自分の身内だったらどうする? 年を重ねて変わっていく親子関係について描いた西野みや子さんの『わたしの親が老害なんて』

 周囲の視線を気にせず怒鳴り散らす、こちらの話を聞かずに古い価値観を押し付ける……。いわゆる“老害”に自分の親がなってしまったら? 自分を育ててくれた大切な両親だったはずなのに、二人の行動を恥ずかしく感じてしまう。しかしこれまでの恩があるから見捨てることもできない。そんな葛藤を感じ、さらには里帰り出産に帰省した娘と両親の板挟みに苦しむ栄子(54歳)の姿を描いたのが『わたしの親が老害なんて』(西野みや子/KADOKAWA)。彼女の気持ちには年老いた親を持つ方なら多かれ少なかれ共感する部分があるのではないでしょうか。セミフィクションである本作を著者である西野みや子さんはどう描いていったのか? 自身の経験を含めお話を伺いました。

――娘・美咲が里帰り出産のため実家で暮らすようになり、栄子の悩みはさらに膨らみます。この展開を考えたのはなぜですか?

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西野みや子(以下、西野):私自身が親や親族と一番ジェネレーションギャップを感じたのが子育てについてなんですよ。「泣いてすぐ抱っこしたら抱き癖がつく」「つわりがきつくても二人分食べないと」など今の医学では否定されていることを言われて。毒親とまでは言えないけどモヤモヤすることを言ってくるのも、老害のひとつかなと思うんです。店員さんを罵倒する、みたいな誰が見ても明らかなパターンだけでなく、ひとつひとつ言葉で心にトゲを刺してくるのも老害のひとつなんじゃないかなということを、自分も体験した子育てでなら描けるなと思ってこの展開にしました。

――主人公は親に従う、顔色をうかがうタイプですが美咲は自分の意見を貫くタイプですよね。ふたりを違うタイプの人間にしたのも何か意図がありますか?

西野:美咲は私、栄子は私と、私の中の母ですね。祖父母の頑固さや面倒くささは母も感じているところがあるようなのですが、それに慣れるというか当たり前だと思っているように私には見えるんです。加えて、「この場を丸く収めたい」という狭い田舎の世界の価値観もついてきていて。対して、私は「おかしいものはおかしい」と昔から言っていました。

――今お話を聞いて、それって性格の違いももちろんありますが、世代の違いもあるのかなと思いました。

西野:今って母親だからこうすべき、というのも薄れてきていると思うのですが、昔はかなりありましたよね。うちの母も私が小さい頃は茶髪でリップも濃くて「みや子ちゃんのお母さんは若くていいね」って言われていたんです。でも大人の間では「派手すぎる」とも言われていて。そう考えると母にも当初は美咲の要素はあったけれど、それが淘汰されていく時代だったのかもしれません。

取材・文=原智香

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