「自分の話だと思った」届いた読者からの声に安堵。年老いていく親への悩みが共感を呼ぶ【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/22

 周囲の視線を気にせず怒鳴り散らす、こちらの話を聞かずに古い価値観を押し付ける……。いわゆる“老害”に自分の親がなってしまったら? 自分を育ててくれた大切な両親だったはずなのに、二人の行動を恥ずかしく感じてしまう。しかしこれまでの恩があるから見捨てることもできない。そんな葛藤を感じ、さらには里帰り出産に帰省した娘と両親の板挟みに苦しむ栄子(54歳)の姿を描いたのが『わたしの親が老害なんて』(西野みや子/KADOKAWA)。彼女の気持ちには年老いた親を持つ方なら多かれ少なかれ共感する部分があるのではないでしょうか。セミフィクションである本作を著者である西野みや子さんはどう描いていったのか? 自身の経験を含めお話を伺いました。

――本作を描く上で苦労したのはどんな部分ですか?

advertisement

西野みや子(以下、西野):今回は「立ち行かないわたしたち」という日常に潜む思いもよらない出来事や困難さをテーマにしたセミフィクション漫画のシリーズとして描いているので、1ページ8コマと決められています。それまで私が勉強してきたのは「大ゴマを使って視線を誘導して……」みたいな感じだったので、最初は8コマで進めるのが難しかったです。それに私は本作が初めての長編漫画で。これまでは日記感覚でSNSに漫画を載せていたので、今までキャラクターの気持ちを深掘りして描いたことがなかったんです。今回は私の思想、考え方が結構露出しているので、もう発売されてからずっとびくびくしています(笑)。

――そうだったんですね(笑)。実際に発売されて、読者の方からの反響はいかがでしたか?

西野:「自分の話だと思った」という声をいただけたのが嬉しかったですね。この作品って悪く言えばドラマチックじゃないというか。大事件が起きるわけでもないし、すごく変わったキャラクターが登場するわけでもないじゃないですか。今SNSで漫画を読む方って、自分にとって身近な内容を読む方と非日常を楽しむために読む方とで二極化しているらしいんです。

その上、この作品は老害と戦ってスカッと終わる、というわけでもないので、人によっては読みごたえがないと感じる方もいると思います。でも自分の身近にこういうことで悩んでいる人がいるかもしれないし、自分もそうなるかもしれない。そういう受け止め方をしてくれた方がいるのが嬉しいです

――自分の感情を把握してそれを描くというのは難しい作業だと思うのですがどうやって描かれたのですか?

西野:担当編集さんが一緒にお話ししながらそれぞれのキャラクターを掘り下げてくれました。その中で、今までの私の漫画は「伝わる人にだけ伝わればいい」という描き方だったことに気づきました。「ここはもうちょっと気持ちを描かないと読者の方に伝わらない」「ミスリードになってしまうかも」と表現方法についても教えていただいて、学びながら描いていきました。

取材・文=原智香

あわせて読みたい