「今、介護で辛い思いをしている人の孤独を代弁したい」自身も親との関係に苦しみながら“毒親の介護”を漫画で描いた理由【著者インタビュー】
公開日:2025/7/15

※この記事はセンシティブな内容を含みます。ご了承の上、お読みください。
小さい頃から自分を罵倒し暴力を振るってきた父が、がんで余命1年と宣告された。一人娘・ヒトミはなるべく父と関わらずにいられるように介護サービスを検討、実行に移す。しかし父は他者の介入を拒絶。頼れる親族もいないヒトミに全ての負担がのしかかる。相変わらず心無い言葉を浴びせる父。育児と仕事にも影響が出るほどの物理的負担。やがてヒトミには“介護うつ”の症状が出始めて……。
毒親、介護、ふたつの要素が絡み合う『余命300日の毒親』(枇杷かな子:著、太田差惠子:監修/KADOKAWA)。自身も親の介護中に描いたという著者の枇杷かな子さん。ご自身も“介護うつ”になったという枇杷さんの介護の経験、多忙な中でも本作を通して伝えたかったことを聞きました。
――『余命300日の毒親』を書くことになったきっかけから教えてください。
枇杷かな子さん(以下、枇杷):担当編集の方と、「毒親をテーマに描こう」と1年くらいずっとプロットを考えていたんです。それでもいまいち上手くいかなくて「これじゃ誰かの心に届かないよな」と行き詰まっていました。その時ちょうど私が介護をしていて。父の要望や言動に相当振り回されて病んでいた時期でもあったので「介護がテーマだったら描けるかもしれない」と始めたのがきっかけですね。
――あとがきでご自身の介護について描かれているのを拝読しましたが、精神的にも体力的にもかなり大変だったのではと感じました。そんな中、マンガの制作も進められたモチベーションはなんだったのでしょうか。
枇杷:正直、怒りがモチベーションになったというのはあります。父に対する怒りとか悔しさ、介護で感じる孤独をどうにかして世の中の人に知ってほしいという気持ちがありました。セミフィクションではありますが、描いているとヒトミがまるで自分自身のように思えてきて。ヒトミに共感することで自分の気持ちが和らぐんです。だから読む人にもそう思ってもらえるんじゃないかと勝手に思ったりして。「今辛い思いをしている人の孤独とか悔しさを代弁できるような作品にしたい、届けたい」というのがモチベーションになりました
――ご自身が体験されたこととか感じた気持ちが作品の中に結構入っているんですね。とはいえセミフィクションということで全てが実体験ではないと思うのですが、ご自身の体験以外はどんなところから着想を得たのですか?
枇杷:ちょうどマンガを描いている時期、父に怒鳴られてかなり気持ちが落ち込んでしまって。マッサージに行ったのですが、そのマッサージ師さんが同世代の方だったんです。「介護で疲れているんです」と話したら「私も20代後半で介護したんです」とおっしゃられて。取材とまではいきませんが、その方や知り合いに介護体験の話を聞いたりしました。
文・取材=原智香