「きさらぎ駅」とは一体何なのか? 8年前に失踪した友人との再会を願い、少女は都市伝説の謎に挑む! サバイバルホラーコミック『カタリカ 語り禍』【書評】

マンガ

公開日:2025/8/7

【ホラー、グロテスクな表現があります。苦手な人は閲覧注意!】

 あなたは「都市伝説」と聞くとどう思うだろうか。科学的根拠はなく、証拠も曖昧な話ばかりだが、心霊現象などに類する話と比べて「これはもしかして」と思わせるのが都市伝説の妙だと思う。さらに、誰かの体験談として語られると現実味が増し、より好奇心をかき立てられてしまうのは人間の性だろう。

カタリカ 語り禍』(逢縁奇演:原案、クラタヒロヤス:作画、猪原賽:構成/竹書房)は、かつてインターネットの掲示板で話題になった都市伝説「きさらぎ駅」を題材にしたサバイバルホラー作品だ。

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 ある日、探偵見習い・笹塚ささみのもとに一本のカセットテープが届く。それは「きさらぎ駅」から送られた物だった。差出人は8年前に忽然と姿を消した幼馴染・片宮つばめ。つばめの行方を追うささみは、かつてとある事件で人質となり、ただ一人帰還した少女・田中由愛に接触を試みる。失われた記憶、そして繰り返される謎。「きさらぎ駅」に足を踏み入れたら、生きて帰れる保証はない。それでもふたりは、それぞれの大切な友人との再会をかけて禁断の駅へと向かうが――。

 本作の見どころは、いわゆるスリルとサスペンスに加え、異界に囚われる恐怖と絶望の中で描かれる少女たちの友情である。自分の命を守るか、それとも友人を救うか。過酷な状況の中で幾度となく厳しい選択を迫られながらも、彼女たちは互いを信じ、大切な友人だけは安全な世界で幸せに生きていてほしいと強く願う。そこには自己犠牲という言葉では片づけられない、揺るぎない信頼と深い思いやりがある。危険に満ちた世界の中で、ただひたすらに友を想い行動する彼女たちの優しさと勇気が胸を打つ。

 また、都市伝説として語り継がれる「きさらぎ駅」の謎にも注目。実在しないはずの駅「きさらぎ駅」が実体をもって出現し、駅の不可解な構造や異形の怪異たちにまつわる真実が少しずつ明かされていく。物語冒頭の不可解かつ緊迫の展開を目にしたあなたは、すでにこの恐怖に取り込まれてしまっているはずだ。

文=ネゴト / 糸野旬

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