妊娠から出産に至るまでのつらさ、育児中の苦しみと葛藤、そして喜び。きれいごとばかりではない親の本音を赤裸々にぶちまけた、共感必至の実録コミック!【書評】

マンガ

公開日:2025/7/31

 妊娠はめでたいことである一方、親となる本人にとって、初産の場合は特にこれからの出産と育児を考えると計り知れないほどの不安を抱く。けれど「おめでたいのに弱音を吐くなんて……」という空気にするのも気が引けて、なかなか本音を言える場面は少ないのではないだろうか。

 そんな繊細で複雑な感情を、妊娠から出産、そして育児へと、時系列に沿ってコミカルに描いたのが、ブロガー・ダルダルのダル子さんによるコミック『ヤケッパチパチ! 元ヒステリック妊婦の育児ログ!』と、続編の『1歳になってもヤケッパチパチ! 元ヒステリック妊婦の育児ログ!』(ともにKADOKAWA)。つわりのつらさや妊娠線への戸惑い、予定日を過ぎても大きくなり続けるお腹への恐怖……。「妊婦が終わりません」とこぼすその姿には思わず頷く人も多いはずだ。

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 特に印象的なのは、妊娠がわかった瞬間に子育てや出産、つわりへの不安が一気に押し寄せ「こんなんでいい親になれるの?」と自責する場面には思わず胸が締め付けられる。

 妊娠、出産、育児は当然ながらきれいごとばかりではない。不安や悩み、そしてわからないことだらけだ。だからこそ本当の気持ちを包み隠さず、むしろ大っぴらに描いた作品は貴重であると思う。

 こうした赤裸々な描写が、多くの新米ママたちにとって「こんなふうに考えてもいいんだ」と思わせ、ふっと肩の力を抜いてくれるだろう。もちろん悩みだけでなく、子どもの成長のうれしさや夫との何気ないやりとりなど、思わず笑顔になる場面もあり、読めば「まあなんとかなるか」と、気持ちを軽く前向きにしてくれるはずだ。

 今まさに出産を控えて不安を抱えている人、子育て中で悩みを抱えている人の心に寄り添う、共感に満ちた作品である。

文=ネゴト / すずかん

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