子ども向けの性教育本で、動物の交尾は描いて、人間の性交は描かなかった理由【著者対談】

マンガ

公開日:2025/7/21

『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より

 大人の学び直しができる“児童書”が話題です。“子どもが自分で読める性教育の本がほしい!”というたくさんの声から生まれた『こどもせいきょういくはじめます おうち性教育はじめますシリーズ』(フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)の著者・フクチマミさんと、“いのち”を脅かす日常のピンチを切り抜けるための知識をまとめた『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(滝乃 みわこ:著、池上 彰・今泉 忠明・国崎 信江・ 西 竜一 :監修/ダイヤモンド社)の著者・滝乃みわこさん。ふたりに共通するのは“ふつうの大人”であること。専門家からの目線ではなく、“ふつうの大人”の素朴な目線から専門家に取材し、自身も学び直しながら、児童書を書き上げたといいます。

 制作中、お互いの著書にたくさんのヒントと勇気をもらっていたというふたり。今回は滝乃さんがフクチさんにインタビューする形で、累計35万部超の人気シリーズ最新作『こどもせいきょういくはじめます』について語っていただきました。“大人の学びなおし”にもなる視点が詰まっています。

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フクチマミさん
フクチマミさん

滝乃みわこさん(以下、滝乃):動物の交尾から、人間の性交について伝えるシーンがありますよね。具体的なところまでは描かれていませんが、ここはあえて描かないという判断をされたんですか?

『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より

フクチマミさん(以下、フクチ):性教育の専門書などでは、性交について、人間の性器のイラストを使って説明しています。それが本書に必要なのかどうか、共著の先生方とはかなり時間をかけて話し合いました。先生方は、「いつかは知ることなのだから、学びという形で吸収できる年齢で、正しい知識を伝えたほうがいい」と。執筆者としては、もう絶対にその通りだと思うんです。でも、ふつうの大人としては、抵抗感がありました。

滝乃:その“ふつうの大人”の感覚を大切にしたのですね。

フクチ:この本を手に取って、中身をパラパラ見たときに、性交がイラストつきで解説されていたら、ふつうの親である私は「子どもにはまだ見せたくない」と、とっさに本を閉じるだろうと思いました。他に伝えたい大切なことがたくさんあるのに、性交の描写があることによって、子どもたちにこの本が届かないのは、すごく悔しいこと。だから、描いた方がいいんだけど、描かなかったというのが実情なんです。

滝乃:そういうことだったんですね。この抵抗感の正体って、何なのでしょうね。

フクチ:それを先生方とよく考えたんです。しばらくして、北山先生が「動物とは違って、人間の性交はプライバシーなんですよね」って。すると、もうひとりの共著者である村瀬幸浩先生(性教育研究者)が「そうか。性交のイラストを子どもに見せることで、親は自分たちのプライバシーが暴かれたような気持ちになってしまう部分もあるのかな」と。

滝乃:なるほど。プライバシーを侵害される可能性があることに、抵抗を感じていた、と。

フクチ:はい。モヤモヤした抵抗感の正体が言語化されたことが、すごく大きかったです。

取材・文=瀬戸珠恵

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