妊娠のしくみを知った時に親が汚く思えた… 乱暴な性表現から子どもたちを守り、思いこみで性犯罪をさせないために【著者対談】

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公開日:2025/7/23

『こどもせいきょういくはじめます』本文より
『こどもせいきょういくはじめます』本文より

 大人の学び直しができる“児童書”が話題です。“子どもが自分で読める性教育の本がほしい!”というたくさんの声から生まれた『こどもせいきょういくはじめます おうち性教育はじめますシリーズ』(フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)の著者・フクチマミさんと、“いのち”を脅かす日常のピンチを切り抜けるための知識をまとめた『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(滝乃 みわこ:著、池上 彰・今泉 忠明・国崎 信江・ 西 竜一 :監修/ダイヤモンド社)の著者・滝乃みわこさん。ふたりに共通するのは“ふつうの大人”であること。専門家からの目線ではなく、“ふつうの大人”の素朴な目線から専門家に取材し、自身も学び直しながら、児童書を書き上げたといいます。

 制作中、お互いの著書にたくさんのヒントと勇気をもらっていたというふたり。今回は滝乃さんがフクチさんにインタビューする形で、累計35万部超の人気シリーズ最新作『こどもせいきょういくはじめます』について語っていただきました。“大人の学びなおし”にもなる視点が詰まっています。

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滝乃みわこさん(左)と、フクチマミさん(右)。
滝乃みわこさん(左)と、フクチマミさん(右)。

フクチマミさん(以下、フクチ):私たち大人の世代が育ってきた環境って、性的な表現、支配的な表現にわりと触れてきたのかなと思うんです。テレビで女性の裸がハプニング的に描写されたり。半裸の女性たちが、神経衰弱のカードのように扱われていたバラエティ番組もありました。

滝乃みわこさん(以下、滝乃):ありましたね〜。徐々に消えていったけれど、急にキスしたり“壁ドン”したり、最初はイヤがっていた相手がだんだん…という性表現は未だに残っています。だから現実とフィクションを一緒にしないように、『いのちをまもる図鑑』にも「「思いこみ」で性犯罪をしないために」というページをつくりました。

『いのちをまもる図鑑』本文より イラスト:室木おすし
『いのちをまもる図鑑』本文より イラスト:室木おすし

フクチ:同世代のある人から、こんな感想をいただいたんです。「自分はそういう世代なので、性的なことにいいイメージがなかった。だから、妊娠のしくみを知った時に、自分の親が汚く思えてしまって。好き、だけど汚い、という葛藤を抱えて思春期を過ごした。そんな自分が親になった。乱暴な性表現に傷ついてきたから、子どもには性教育を伝えたい。でも、自分は汚いと思われてしまうかもしれない。不安でいっぱいになりながら、この本を渡しました。子どもは、“ココとココがおもしろかった!”と言って、様子も変わらなくて。本当にほっとしたし、読ませてよかったです」と。

滝乃:子どもを守りたいという一心で、それほどの覚悟で渡したんですね…。でもこの本は、子どもがおもしろく読めて、親のことも引き続き好きだと思える性教育の本だったと。

フクチ:今回は児童書でしたけれど、しんどさを抱えている大人が、私も含めてたくさんいることを感じました。変えなければいけないのは、子どもではなく、社会のほうなのかもって。

滝乃:本書を読んで、私も小学生のときにこういう性教育を受けていたらな、と思いました。同時に、いろんな経験を積んできた今読んだからこそ「アレはこう考えたらいいのか!」「次はこう言えばいいのか!」とすんなり吸収できたのかも。生きやすくなったというか、自分の中の何かが変わった感覚があるんですよね。大人が変われば、社会は変わりますよね。

取材・文=瀬戸珠恵

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