「もう全人類に、この本を配った方がいい」子どもの価値観が変わるほどの「知らなかった」に出会える1冊【著者対談】
公開日:2025/7/28

児童書を子どもに読ませようと与えて、全く興味を示してもらえなかった経験がありませんか? どれだけ良い児童書でも、それを子どもに「与えて」「読ませよう」とすると読んでくれないことも。一方で、子ども自らが夢中で次のページをめくり始める児童書があります。いったい何が違うのでしょうか? ――そこには、著者が悩みに悩んでひねり出した“しかけ”がありました。
“いのち”を脅かす日常のピンチを切り抜けるための知識をまとめた児童書『いのちをまもる図鑑 最強のピンチ脱出マニュアル』(滝乃みわこ:著、池上 彰・今泉忠明・国崎信江・ 西竜一:監修/ダイヤモンド社)著者・滝乃みわこさんと、“子どもが自分で読める性教育の本がほしい!”というたくさんの声から生まれた『こどもせいきょういくはじめます おうち性教育はじめますシリーズ』(フクチマミ、村瀬幸浩、北山ひと美/KADOKAWA)の著者・フクチマミさんとの対談が実現!
制作中、お互いの著書にたくさんのヒントと勇気をもらっていたというふたり。フクチさんが滝乃さんにインタビューする形で、2025年上半期のベストセラーとなった児童書『いのちをまもる図鑑』の“しかけ”について語っていただきました。

フクチマミさん(以下、フクチ):私は『こどもせいきょういくはじめます』が初めて手がけた児童書なのですが、他の著書と比べると、ネットのレビューが少ないような気がしていて。
滝乃みわこさん(以下、滝乃):児童書は、売れている冊数に対してレビューが少ない傾向はあると思います。子どもが主な読者なので、ネットでは話題にはなりづらいのかもしれませんね。
フクチ:『いのちをまもる図鑑』くらい超話題になっている本でも、そうなんですね。
滝乃:感想ハガキを拝読すると、子どもたちはもう圧倒的に「危険生物」が好き。男の子も女の子も大好きです。あるお子さんは「もう全人類に、この本を配った方がいいです!」と、熱烈な感想を送ってくれました。
フクチ:へぇー! 「これはすごい!みんなにも読んで欲しい!」という気持ちが伝わってきます。
滝乃:大人からの感想で、高確率で書かれているのが「子どもが、この本で学んだ知識を教えてくれました」。それがすごく嬉しかったからと、感想を送ってくださるんです。
フクチ:まさに「他の人に話したくなる」現象ですね。きっと知らないだろうなと思って、ワクワクしながら教えている子どもの様子が目に浮かんでくる。
滝乃:ありがたいことに、「大人も知識をアップデートできた!」という感想がわりとあるんです。大人はきっと、子どもから「この本、買ってくれ」と言われて、なんだかふざけた本だなと思いつつ買ってあげて、どうせふざけた内容だろうと思っていたのに、子どもが本で読んだことをちょくちょく共有してくれる。どうやら意外とタメになることが書いてあるらしいぞと開いてみたら、いじめや性犯罪のことまで網羅されていて、きちんと専門家が監修しているじゃないか、と。


フクチ:「いのち」「生きること」に関わる知識をきちんと得ることができるから、子どもはもちろん、大人にも新たな発見があるんですよね。
滝乃:私たち大人世代は、そもそも性についてとか、ネットリテラシーとかを、教育として学べる機会はほとんどありませんでしたよね。大人も子どもも、単に「知らなかった」ことがいのち取りになることもある。根拠がよくわからない情報はネットに載っているけれど、価値観が変わるほどの「知らなかった」ことに出会えるのは、やっぱり読書の醍醐味なのかな、なんて思います。

取材・文=瀬戸珠恵