2010年以降の日本で冷夏なし。猛暑が異常ではなく「普通」になった2つの理由/異常気象の未来予測

スポーツ・科学

公開日:2025/7/26

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

異常気象の未来予測』(立花義裕/ポプラ社)第2回【全5回】

 毎年のように猛暑、豪雨、豪雪が日本を襲い、異常気象が「普通」の時代に突入。日本には四季がなくなり、夏と冬の「二季の国」となったと感じている方は多いのではないだろうか。その一因となっているのは二酸化炭素の増加による地球温暖化。このまま二酸化炭素を増やし続ければ、さらに厳しい気候が来ると予想されている。最高気温が40度を超える世界でどう生きるか。異常気象の現状と未来予測、温暖化対策についてをあらゆる角度から解説した書籍『異常気象の未来予測』の一部をお届けします。

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『異常気象の未来予測』
『異常気象の未来予測』(立花義裕/ポプラ社)

観測史上、最高レベルの高温

 猛暑は日本など特定の地域を狙い撃ちしています。その理由は大きく分けて二つ、大気と海洋の異常です。

 まず大気から説明していきましょう。どれくらい猛暑が厳しいかについて、観測事実を見てみます。

『異常気象の未来予測』

 図2は7月の北日本の気温の平年からの差を示したものですが、2021年以降が連続して暑いことがわかります。図では示していないのですが、2024年は8月から10月まで連続で観測史上最高の気温を更新し続けました。2021年以降がダントツに暑いのでそれに埋もれていますが、2010年以降、冷夏になった年はありません。

 それ以前は、猛暑も冷夏も、振り子のようにある程度「公平」に起こっていました。これこそ「自然の揺らぎ」なのです。

 自然の揺らぎで起こっていた猛暑や冷夏が、2010年以降大きく変わりました。まさに、猛暑年が異常ではなく「普通」となった、「ニューノーマル」の幕開けと考えていいでしょう。

「近年の異常気象の原因は二酸化炭素増加による温室効果ではなく、自然変動だ」という言説を信じる人が散見されています。専門家以外の人にとって、何が正しいのか、間違っているのかを判別するのはむずかしいかもしれませんが、科学的な知見からは「温暖化は自然変動にすぎない」という主張が間違いであることは自明です。

 例えば「太陽活動の変化が猛暑の原因である」という説。太陽活動は約10年スパンで強弱を繰り返しています。従って10年に1回程度の気象現象は、太陽活動が原因の場合もあるのです。

 しかし図2で示しているように、ここ数年は観測史上最高レベルの高温が続いており、周期現象ではありません。温室効果ガスの増加による変化が太陽の周期現象を超えているため、史上最高気温が記録され続けています。

 同様に、ある特定の日だけ極端に暑いことは昔からよくありました。あるいは、7月が猛暑なら8月は涼しく、夏をとおすと平年並みという年もよく見られていました。これらは自然変動の典型です。

 ところが近年の猛暑は、夏を通じて延々と酷暑の日が続きます、ごく数日だけ「普通の夏らしい日」があるのみ。猛暑を理解するためには、特定の日の気象や特定の日の天気図を見るだけでは足りないのです。

 夏を通じて何らかの異常な状態が継続していたと考える必要があるのですが、その原因は何なのでしょうか?

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