2010年以降の日本で冷夏なし。猛暑が異常ではなく「普通」になった2つの理由/異常気象の未来予測

スポーツ・科学

公開日:2025/7/26

猛暑が続く要因

 猛暑が続く大きな要因は、日本を含めた中緯度上空に吹く「偏西風」の蛇行にあります。飛行機が飛ぶ高さくらいの上空を西から東に向かって吹いている風が偏西風です。

 偏西風の中心部分の一番強い風はジェット気流と呼ばれています。日本からアメリカへ行く飛行機が、復路より往路のほうが早く到着するのはこの偏西風に乗るためです。一年を通じて吹いている風で、冬期には秒速80メートルにも達します。これは新幹線並みの速さです。

 偏西風は寒気と暖気の境目に吹いていて、北には寒気、南には暖気があります。偏西風がカーテンのように南北の空気を仕切っていて、偏西風の北にいると寒く、南にいると暑いのです。

『異常気象の未来予測』

 二つの偏西風の流れのパターンを表したのが図3です。上段は蛇行が小さいパターン。これが通常の偏西風の流れで、少し南北に振れながら西から東に吹きます。

 近年のパターンが図3の下段です。偏西風が激しく蛇行する傾向があり、北に出っ張ったところにちょうど日本が位置していることがわかります。そこに高気圧(高気圧は図3の「暑」の位置)が留まることで日本は暑くなっているのです。

 夏の天気予報でよく耳にする「太平洋高気圧」がこれに相当します。「太平洋高気圧=暑い」と覚えておきましょう。太平洋高気圧はもともと日本よりも南東に位置しているのですが、偏西風の北への蛇行に伴って日本に張り出すようになっているのです。

 高気圧周辺では、その等圧線に沿って時計回りに風が吹いています。つまり、高気圧は時計回りの大きな渦巻きです。大きさは台風よりも圧倒的に大きく1000キロメートルをはるかに超えます。日本付近は高気圧の中心の西に位置するので、南風が吹きます。この南風は北風よりも温度が高いため暑いのですが、高気圧が暑さをもたらす理由は南風だけではありません。

 偏西風が北に凸の場所には、高気圧が留まりやすくなっています。それはなぜかと言うと、偏西風が北に凸の場所には、偏西風に沿って時計回りに風が吹いているためです。そこには時計回りの渦がつくられます。先にお伝えしたように高気圧は時計回りの渦であるため、偏西風が北に蛇行した地域は、結果的に高気圧に覆われることになります。比喩的に考えるなら、偏西風が北に凸の場所に、南にあった高気圧の渦がはまったと言えるでしょう。

 次に偏西風蛇行を地球規模で眺めてみましょう。

 図3の下段のように、近年の夏によく見られる偏西風蛇行は、地球のあちらこちらで見られます。日本だけではなく、ヨーロッパと北米で北に出っ張って蛇行しています。そのため、ヨーロッパや北米でも猛暑が頻発しているのです。

 ヨーロッパで偏西風が北に蛇行すると日本でもほぼ同時期か、少し遅れて蛇行します。偏西風の蛇行は波のような形状をしているので、「偏西風波動」と呼ぶこともあります。

 蛇行の凸と凸の間の長さ、つまり波の波長はほぼ決まっていて、概ね数1000キロメートル。ちょうど日本とヨーロッパの距離にあたります。日本の猛暑とヨーロッパの猛暑がほぼ同時期にニュースとなるのはこのためです。

<第3回に続く>

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