豪雨の発生増加は日本だけではない。温暖化により世界各地で豪雨が増えているのはなぜ?/異常気象の未来予測

スポーツ・科学

公開日:2025/7/27

※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)
※写真はイメージです(画像提供:ピクスタ)

異常気象の未来予測』(立花義裕/ポプラ社)第3回【全5回】

 毎年のように猛暑、豪雨、豪雪が日本を襲い、異常気象が「普通」の時代に突入。日本には四季がなくなり、夏と冬の「二季の国」となったと感じている方は多いのではないだろうか。その一因となっているのは二酸化炭素の増加による地球温暖化。このまま二酸化炭素を増やし続ければ、さらに厳しい気候が来ると予想されている。最高気温が40度を超える世界でどう生きるか。異常気象の現状と未来予測、温暖化対策についてをあらゆる角度から解説した書籍『異常気象の未来予測』の一部をお届けします。

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『異常気象の未来予測』
『異常気象の未来予測』(立花義裕/ポプラ社)

毎年更新される観測史上最大豪雨

 近年、「地球温暖化が原因となって豪雨が増えている」と認識している人も多いでしょう。では、温暖化するとどうして豪雨が増えるのか? それを説明できる人はまだ少数です。

 今の豪雨は昔と違います。かつての豪雨と言えば、九州や四国で起こることがほとんどでしたが、今や長野県や岩手県、北海道、瀬戸内海地域など、雨が少なかった地域でも頻繁に豪雨が発生しています。2024年は能登半島、秋田県、山形県などで豪雨が起こり、日本全国至る所で発生しているのです。

 日本のどこで豪雨が起こってもおかしくない時代。やっかいなことに、雨が少ない地域に住む人々は、豪雨に慣れていないので、少しの雨でも災害となっています。

 日本だけでなく、近年は世界各地で、とてつもない豪雨が発生しており、2024年のスペイン豪雨などがその代表例です。もともと雨量が少ない地域のため、日本の豪雨よりも総雨量は少なくても、豪雨に慣れていないため、災害が増幅します。雨量と災害規模は比例しないのです。

 近年の豪雨は、広範囲でより長期間降る「広域長期型」が特徴です。昔は狭い範囲に短時間にドカッと降っていたので、被害も地域限定型でした。近年は長く降り続き、且つ日本の広い範囲で降る雨が増えており、被害地域も広範囲に及んでいます。

 線状降水帯の知名度が上がっていますが、これは狭い範囲に豪雨をもたらす現象です。最近の豪雨には、線状降水帯をあまり伴わない例も増えています。

 2018年の西日本豪雨は線状降水帯が主因ではないという意味で象徴的な豪雨でした。長野県以西の数多くの観測点と北海道で、3日降水量(72時間降水量)での観測史上最大の降水を記録。関東と東北を除くほとんどの地域で観測史上最大の豪雨が3日間以上降り続いたのです。筒井康隆さんのパロディー小説『日本以外全部沈没』のように、「関東・東北以外全部沈没」を予期させるような豪雨でした。

 実はこの豪雨は3日前に気象庁が緊急記者会見を開き、ほぼ完璧に予測ができていました。浸水域もハザードマップとほぼ一致。そこまで予測できていたにもかかわらず、被害は甚大だったのです。

 西日本豪雨は、全国のニュース番組で緊急記者会見が何度も流れ、新聞でもとりあげられ、マスコミは全力で注意喚起を行っていました。それでも大きな被害になったのは、人々の関心の主軸がマスメディアから離れたからという見方もありますが、それは間違っているでしょう。なぜなら、気象系のネット界隈でも、この予測が大いに話題になり、注意喚起が強くなされたからです。

 なぜ予測が完璧で、マスメディアでもネットメディアでも大いに話題となっていても、大災害が起こってしまったのでしょうか?

 その理由は、無関心派及び危機感が稀薄な人が多数だったためだと考えています。これが、予測精度がどんなに向上しても、災害被害がほとんど減らない要因なのです。

 気象現象に無関心な人や自分事としてとらえていない人が圧倒的多数であれば、残念ながらどんなに有用な情報を発信しても、無意味となってしまいます。多くの人は関心を示しませんし、その情報を防災に活用することもありません。教育的に優れたテレビ番組の視聴率が高いとはかぎらないのと同様です。災害時の定番フレーズ「まさか自分のところに……」は、その具現なのです。

 これは地球温暖化問題と共通しています。世論が興味を示さない最先端の科学理論は、どれほど科学的に素晴らしくても、日本人にとってその価値はゼロに限りなく近いのです。

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