豪雨の発生増加は日本だけではない。温暖化により世界各地で豪雨が増えているのはなぜ?/異常気象の未来予測
公開日:2025/7/27
熱帯地域と同じ日本の豪雨
実は日本の豪雨は熱帯級の激しさを見せています。日本では、1回の総雨量が1000ミリメートルを超える事例は珍しくありません。日本と同等の中緯度でこれほど多く雨が降る地域はほかにはなく、熱帯地方でも1回の雨で1000ミリメートルを超えることも多くありません。日本の豪雨は、熱帯の豪雨にひけを取らないのです。
では、日本で雨が多い地帯はどこか見ていきましょう。
南に位置する沖縄県は、雨が多い地域です。逆に寒い地方である北海道の北部は雨が少なくなっています。
暖かい地域は雨が多く、寒い地域に雨が少ない理由は、高温の空気ほど大量の水蒸気を含むことができるからです。
では、緯度がほぼ同じであって、気温もそれほど変わらない九州、四国、本州の雨量は同じなのでしょうか?
答えはノーです。宮崎県、高知県、紀伊半島の南部、伊豆半島では夏の雨量が多くなっています。これらの地域の南には黒潮が流れているのがその理由です。水温が高い海ほど、より大量の水蒸気が蒸発し、雲の強さが増します。日本の雨の気候分布に黒潮の影響は絶大なのです。
危惧される「地球沸騰化」の世界
暖かい黒潮が日本の雨量分布に影響を及ぼすことからも、近年、豪雨が頻発している理由が海の温暖化です。
海面水温の観測は1890年から始まりました。以降、30年間で0.2度のペースで海面水温が上昇していたにもかかわらず、2023年の調べでは、直近のわずか7年間で0.2度の上昇が見られたのです。
海面水温の異常を受けて、2023年7月に国連事務総長のアントニオ・グテーレスは「地球温暖化が終わり、地球沸騰化の時代に入る」と警告しました。
世界で最も温暖化の激しい海域である日本近海の水温上昇(プラス1.33度)は、世界平均の水温上昇(プラス0.62度)に比べて約2倍の速度で温暖化しています。繰り返しになりますが、暖かい黒潮は世界で最も流量が多いことがその理由です。
海面水温が高くなると、どうして豪雨が増えるのでしょうか? 温泉と洗濯物を例に説明していきましょう。
熱い露天風呂からモウモウと立つ湯気。湯温が高いほど蒸発量が増えるため、湯気がたくさん立ちます。湯気は無数の水滴でできているので、それが雲の増加につながるのです。
夏の暑い日の洗濯物はすぐに乾きますが、冬の寒い日はなかなか乾かないですよね。これも温度の影響で、高温の夏ほど洗濯物の水分蒸発速度が速いのです。第2章で説明したように、水温が28度を超えると海からの蒸発量は爆発的に増えて、クラウドクラスター(巨大積乱雲群)が発生します。水温上昇で、日本の雨が熱帯化しているのです。
海面水温の上昇が、水蒸気量の極端な増加をもたらしています。上空の水蒸気量が増えれば、雲の増加をもたらし、大量の雨量、つまり豪雨へとつながります。
例えば、2024年9月の能登半島の豪雨では、能登半島にぶつかった雨雲は日本海西部からやってきました。そのときの日本海の海面水温は、平年より5度高いところも。その影響で、雨雲の水蒸気が増え、豪雨に拍車がかかりました。
水温が5度も高いということは、日本海が日本一雨の多い鹿児島県の屋久島周辺と同じになったということです。5度も水温が高い理由は、温暖化とそれに連動した猛暑。猛暑が水温を上げて、豪雨が生まれたのです。
<第4回に続く>