泉谷しげる、新人漫画家になる。サイバーパンク漫画『ローリングサンダー』に込めた40年分の想い【インタビュー】

マンガ

公開日:2025/7/26

泉谷流サイバーパンクの定義とは?

――今回の作品にはさまざまな社会問題が盛り込まれていますが、泉谷さん自身も阪神淡路大震災をはじめ、さまざまな被災地で復興応援のイベントを実現されてきたじゃないですか。そういう行動力は、どこからくるんでしょう?

泉谷 台風や震災で自分たちの住む町が崩れた。そりゃ呆然とするでしょう。絶望的な気にもなるでしょう。だけど、何日かすると瓦礫の中で子どもたちは遊び始めます。私の定義で言うと、それがサイバーパンクの精神なんです。どんな状況であっても人間というものは遊んじゃう。暗くなっていた大人たちも、遊んでいる子どもたちを見てニコッとして、さぁ片付けようかと立ち上がる。そういう美しい動き、人間の力を見に行ってるとでも言うのかな。

泉谷しげる氏

――東日本大震災の時も、被災地応援のため大友克洋さんや浦沢直樹さんなど漫画家有志やアーティストと共にチャリティーイベント「マンガ・サミット」を行われて、コロナ禍で打撃を受けたライブハウスを今も巡り続けていらっしゃいます。

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泉谷 自分の流儀としてあえて言いますが、こういう話を聞かれないとしないのは、どういう成果をあげても自慢げにしてはいけないと思うから。「俺がこれをやりました」なんて言うのはくだらない政治家と一緒。通りすがりにその時できることをやって、終わったらそっといなくなる。善意ってそういう匿名性のあるものじゃないですかね。

――一番カッコいいヤツじゃないですか!

泉谷 だけど自分、名前があるんで目立っちゃって、そのカッコよさは出ないんですよ。ざーんねん(笑)。

泉谷しげる氏

取材・文=山脇麻生、撮影=島本絵梨佳

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