SNSでスタートした育児漫画から一転。おばあちゃんの戦争体験を描き始めた理由【著者インタビュー】
公開日:2025/8/3

鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。
ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。
――てんてこまいさんが漫画を描き始めたきっかけを教えてください。
てんてこまいさん(以下、てんてこまい):子どもが生まれた2020年がコロナ禍だったので、スマホで「他のママさんはどんな感じで生活しているんやろう」と調べていたんです。そこで育児漫画があることを知って、すごく楽しそうだなと。
私自身、昔から絵を描くことは好きだったのですが、落書き程度でしたね。でも、試しに描いた育児漫画を家族に見せたら「おもろいやん」「SNSで発信したら?」と言ってもらえて。そのままアカウントを作って、描き始めることにしたんです。
――おばあさまの作文と出会ったのは2020年の夏だったそうですが、4年後に『戦争さえなければ』で新コミックエッセイプチ大賞に応募するきっかけは何だったのでしょうか?
てんてこまい:SNSで繋がった方々が「応募した」と報告しているのを見て、賞があるんだ、と。SNSも賞も……本当に何も知らなかったんですよ(笑)。当時、育児漫画を描く延長線上で仕事をいただく機会も増えていて、色んなタイミングが重なって応募することにしました。
――てんてこまいさんにとって、おばあさまはどんな人でしたか?
てんてこまい:天真爛漫で、氷川きよしさんが大好きなおばあちゃん、でしょうか(笑)。部屋にはCDが積み上がっていて、訪れるたびに、近所迷惑になるんじゃないかってくらいの音量で聴いていましたね。
取材=西園寺くらら 文=松本紋芽