芋を太らせるまで待つ余裕なんてなかった。戦時中・戦後の食糧難は田舎でも【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/8/5

 鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。

 ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。

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――おばあさまの作文を読むまで、戦争についてどのようなイメージがありましたか?

てんてこまいさん(以下、てんてこまい):小さい頃に読んだ『火垂るの墓』のイメージでしたね。東京大空襲や大阪大空襲の話もなんとなくは知っていますが、空襲に遭いやすい都心部の生活だけが苦しいのかと思い込んでいました。作文を読んで、直接空爆を受けるような場所でなくても、当時の人たちの生活は大変だったのだと知りました。

――作品を描くにあたって、どのようにリサーチしていったのでしょうか?

てんてこまい:新コミックエッセイプチ大賞に応募する際は、ネット検索が主でした。でも、戦時中の徳之島の情報が見つからなくて。

 徳之島は沖縄に近いから「きっと似ているだろう」と想定して、沖縄の情報をもとに描いていたんですけど……。書籍化に向けて実際に徳之島を訪れたら、沖縄のような異国情緒がなく、むしろかなり日本的な家屋が多くてびっくりしましたね。

――制作する上で特に時間がかかったことや、苦労した点があれば教えてください。

てんてこまい:事実との違いから、書籍化に伴って描き直したところでしょうか。書籍化前のものには、幼い頃のおばあちゃんが、収穫した大きな芋を持っている描写があったんです。でも、徳之島で取材した時に見せたら「当時、こんな大きさの芋はなかった」と。芋を太らせるまで待てないから、細いものを食べていたと教えてもらい、卵を持つシーンに変えました。

取材=西園寺くらら 文=松本紋芽

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