「戦時中より、戦後の方が苦しかった」アメリカ軍にとられるくらいなら食べてしまえと食べ尽くした結果…【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/8/6

 鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。

 ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。

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――現地取材によって、作品の表現が大きく変わった部分はありますか?

てんてこまいさん(以下、てんてこまい):いくつもあります。例えば、小学校の授業風景は、教室のようなところを想定してラフを描いていたんです。

 でも、取材で「ほぼ掘っ立て小屋みたいな、わら葺きの建物だった」「壁もないし、青空教室のところも多かったよ」などと聞いて、すごい衝撃を受けましたね。木造校舎も地域によってはあったみたいですが、それも軍の司令部のように使われていたみたいです。描き直す部分が多過ぎて、少し気持ちが下がりましたが……(笑)。知ってしまったからには事実に合わせよう、と。

――おばあさまの戦争体験の中で、印象的だったことは何でしょうか?

てんてこまい:やっぱり食料がなくなっていくことですよね。これまで、戦時中がしんどいものだと思い込んでいたんですけど、調べてみると戦後がかなり苦しかったという。取材でも、みなさん口を揃えてそうおっしゃっていました。

 戦時中、迫ってくるアメリカ軍にとられるぐらいだったら今食べてしまおうと、子牛の成長を待たずに殺したり……。なんでもかんでもすぐに食べていたみたいですね。

 ただ、おばあちゃんの家の食糧難は、より深刻だったようです。現地の方に当時のおばあちゃんの生活の様子を話したら「そんなものを食べている人もいたの?」と。貧乏さが、桁違いだったみたいですね。

取材=西園寺くらら 文=松本紋芽

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