「戦争がにくい」戦後、次々と家族を失ったおばあちゃんの実話をコミックエッセイに。徳之島への取材で分かったこと【著者インタビュー】
公開日:2025/8/7

鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。
ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。
――本作のタイトル『戦争さえなければ』は、おばあさまの作文からヒントを得たのだと思います。決定まではスムーズでしたか?
てんてこまいさん(以下、てんてこまい):おばあちゃんの作文では「戦争がにくい」と書かれていますが、編集の中川さんとも話して決めました。「戦争がにくい」だと、主観が入りすぎてキツく見える気がして。「戦争さえなければ」だとifの話になるので、その先を想像したり、現代の問題にも繋がるなと。それに、柔らかい表現をした方が読みやすくなると思ったんです。
――書籍化に伴い、徳之島に1泊2日で取材に行かれたそうですが、印象に残っているエピソードはありますか?
てんてこまい:ちょうどおばあちゃんと同い年ぐらいの方がお話を聞かせてくださったんですけど、みなさんすごいしっかりしていて、昔のことを鮮明に覚えてらっしゃる。
だから、戦時中のエピソードを肉付けする時に、すごく参考になりましたね。空襲の緊迫感や、逃げる時の様子など、詳しく教えていただいてありがたかったです。
――現地取材では、方言についても新しい発見があったそうですね。
てんてこまい:徳之島ってそんなに大きくない島なんですけど、地域によって使う言葉が違うんです。だから、おばあちゃんが住んでいた南部で「こういう言葉ってわかりますか?」などと聞くと、意味が即座に返ってくる。よりリアルな表現をするのに助けていただきましたね。
取材=西園寺くらら 文=松本紋芽