文字を教えてもらうことが楽しい。戦争によって学校に通う機会を奪われたおばあちゃんの“学ぶ喜び”【著者インタビュー】
公開日:2025/8/9

鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。
ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。
――夜間中学の先生の、優しい人柄も印象的でした。制作する上で意識したことがあれば教えてください。
てんてこまいさん(以下、てんてこまい):おばあちゃんの作文には、先生が赤字で書いてくださったコメントがたくさんありました。そのコメント一つひとつから、先生がおばあちゃんにすごく寄り添ってくださっていることが伝わってきて。
きれいな字もそうですが、文章から滲み出る“人の良さ”が感じられて、この先生の人柄は絶対に丁寧に描きたいと思って仕上げました。
――作中の「文字が読める喜び」「勉強できる喜び」の描写はどのように創作されたのでしょうか?
てんてこまい:取材に協力してくださった、夜間中学に勤めていた先生に教えていただいた書籍に、具体的なエピソードがいくつも書かれていたんです。そこから着想を得て、イメージを膨らませながら作りました。
――おばあさまが夜間中学に通われていた時のスケジュールについて、率直にどう思いますか?
てんてこまい:ハードですよね。まず、朝6時に起きて仕事に行くっていう時点で絶対に無理です! 朝が苦手なので。しかも、たくさん働いてるのにあまりお金をもらえないというのも、なかなか厳しい。そんな中でも明るくパワフルに過ごしていたおばあちゃんは、改めてすごいと思います。
取材=西園寺くらら 文=松本紋芽