「子を残して死ぬ親の気持ちが、今ならわかる」心をえぐる、おばあちゃんの幼少期【著者インタビュー】
公開日:2025/8/10

鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。
ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。
――リサーチや制作を進める中で、胸が締め付けられるような場面はありましたか?
てんてこまいさん(以下、てんてこまい):自分史についての作文を読んだ時に、おばあちゃんの周りの人が次々に亡くなっていくのが、しんどかったですね。
あと、おばあちゃんのお父さんが亡くなる時も、なんとも言えない切なさがありました。作文を見つけてから数年経って、作品を描いている時は、自分の上の子が5歳、下の子が2歳。自分も親として5年間過ごしてきた中で、改めて当時のことを想像すると、もう……つらすぎる。子どもを残して、しかも子どもの成長を見守れずにこの世を去るって、今考えただけでも涙が出てきます。
――おばあさまのように、大人になってから新しい学びに挑戦するとしたら、何をしたいですか?
てんてこまい:絵の勉強をしたいですね。中学校での美術の時間が、私が絵を学んだ最後だったと思います。高校でも選択科目で選べたんですけど、なぜか美術じゃなくて音楽にしたんですよね。
音楽を選択するとギターが弾けるようになる、って聞いて「ギターが弾けたらかっこいいだろうな」と思うままに進んでしまって(笑)。結局、弾けるようにもならなかったので、だったら美術を選択しておけばよかったと、未だに思います。
取材=西園寺くらら 文=松本紋芽