「先生からのいじめも、ありのまま描いた」祖母の作文から、知った戦時中のリアルな暮らし【著者インタビュー】
公開日:2025/8/11

鹿児島県・徳之島で戦争を体験し、家族全員を失いながらも生き抜いた祖母の物語を描いたコミックエッセイ『戦争さえなければ』(てんてこまい/KADOKAWA)が多くの読者の心を動かしている。
ある日、押入れで見つけた封筒。そこには、戦時によって文字を学ぶ機会も奪われ、53歳で夜間中学校に入学した祖母が、習いたての文字で綴った自分史や、戦争への思いを込めた作文「戦争がにくい」が入っていた。内容に衝撃を受けた、孫・てんてこまいさんがエッセイマンガとして仕上げ、KADOKAWAコミックエッセイ編集部が主催する新人賞「第18回新コミックエッセイプチ大賞」を受賞。大幅な加筆・描き下ろしを経て、今回の書籍化に至った。戦争の記憶と学びの尊さを伝える本作の制作背景について、てんてこまいさんに話を伺った。
――おばあさまの、小学1、2年生の時の担任の先生が登場するシーンについて、意識したことはありますか?
てんてこまいさん(以下、てんてこまい):夜間中学の担任・国中先生の人柄の良さと対照的になるようにしました。でも、小学校時代に祖母をいじめた先生のことは、おばあちゃんが作文で書いたままを表現したつもりです。「こんなことをやられた」と力強く書いてあったので、悪い意味で心に残っているのでしょうね。
――制作する中で、てんてこまいさんのご家族とのコミュニケーションに変化はありましたか?
てんてこまい:もともと、うちの家族はすごく仲が良いんですけど、特に母とは制作中にリアルタイムで色んなことを話したり、当時のことを聞いたりしながら進めた記憶があります。一緒に作品を作っていったような感覚ですよね。
――ご自身のルーツを知りたい方も多いようです。今回の取材を通して、アドバイスをお願いします。
てんてこまい:やはり、現地に行くっていうのはすごく大事なんだと思います。顔を見て、私の“人となり”を知ってくれたからこそ、現地の方が教えてくださったことも多いはず。
あとは、早く行動すること。私は徳之島で偶然お会いした方が親戚だとわかり、おじいちゃんとおばあちゃんのエピソードを聞くことができた。でも、その方もとてもお若く見えるんですが、年齢で言うとご高齢なので、5年後だったら今のような情報が入手できたかわかりません。ギリギリのところだったと思います。
取材=西園寺くらら 文=松本紋芽