コミュ力アップのカギは「副詞」にあった! 面白かわいい猫写真×副詞の大喜利が笑える「語彙辞典」【書評】

文芸・カルチャー

公開日:2025/8/6

にゃるほど! コミュ力UP語彙辞典
にゃるほど! コミュ力UP語彙辞典(本多正識:著、石黒圭:監修/KADOKAWA)

 伝えたい気持ちが相手に上手く届かないと、自分の語彙力の乏しさにガッカリすることがある。一体、どんなポイントを意識すれば、円滑なコミュニケーションが成立するのだろうか。

 そんな時、手に取ってほしいのが『にゃるほど! コミュ力UP語彙辞典』(本多正識:著、石黒圭:監修/KADOKAWA)。本書は面白かわいい猫たちに癒されながら、コミュニケーション力を鍛えられる斬新な教養本である。

 副詞は接続詞や形容詞などと比べると、やや地味な印象だ。だが、実はコミュニケーションを豊かにするカギは副詞にあるという。なぜなら、副詞には動詞や形容詞などといった他の言葉の意味を詳しく説明し、表現力を高める役割があるからだ。

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 例えば、同じ意味合いの言葉でも、「【ただちに】行きます」と「【速攻】行きます」では受け手の印象が変わってくる。副詞は普段、なにげなく使っているからこそ存在感が薄いが、縁の下の力持ちのような存在。極めれば、伝えたいことがちゃんと相手に届くコミュニケーションができるようになり、語彙力も高まる。

 語彙力を高める系の書籍は、教科書や参考書のようなものが多く、ページを開くまでのハードルが高いと感じることもあるかもしれない。だが、本書の表紙はかわいい猫写真。書籍を手に取るハードルが、グっと下がる。

 また、本書には他にも手に取りやすい仕掛けが。実は、著者が笑いと言葉のプロなのだ。著者の本多正識さんは、吉本総合芸能学院(NSC)で「伝説の講師」と呼ばれている人物。長年にわたり、漫才などのネタづくりに携わってきた。本多さんは副詞を見事に使いこなした“副詞の大喜利”で、スター猫の面白かわいい写真やSNSでバズった猫写真をよりユーモラスに紹介。巧みな副詞の使い方から学ぶことは多い。

 なお、本書は国立国語研究所の日本語学者によって監修されているため、説得力も満点。各ページには、ひとつひとつの副詞をより深く知ることができるワンポイントアドバイスも。

 副詞は、知れば知るほど奥深い。中には、形容動詞と同じ言葉であるのに全く違う意味になるものもある。例えば、「そっくり」という言葉。形容動詞だと「非常に似ている」という意味だが、副詞の場合は「全部」や「残らず」などという意味になる。

 同じ言葉でもどう使うかによって、相手への伝わり方が違ってくる。本書は、そんな気づきを与え、日本語の面白さを改めて教えてもくれる。

 また、本書で副詞の豊富さに触れると、「この言葉も副詞なのか…」と驚かされることもあるだろう。若者の間では近年、言葉の最後に「知らんけど」をつける風潮があるが、実はこの「知らんけど」も副詞。もともとは、大阪を中心に使われていた方言だったという。

 こんな風に現代らしい副詞も紹介しているので、どんな年代の人でも手に取りやすい。ぜひ、面白かわいい猫写真や添えられた大喜利にクスっとしつつ、副詞の奥深さを楽しんでほしい。

文=古川諭香

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