遅刻、欠勤、パワハラ、セクハラ…辞めてほしい問題社員にどう切り出す? 弁護士で「円満退職請負人」の著者が教える、会社と社員を守る方法【書評】

ビジネス

PR 公開日:2025/8/21

「円満退職請負人」が教える! 全員が幸せになる「トラブルなし」で問題社員に1ヶ月で辞めてもらう方法
「円満退職請負人」が教える! 全員が幸せになる「トラブルなし」で問題社員に1ヶ月で辞めてもらう方法(西脇健人/翔泳社)

 セクハラ、パワハラを繰り返す社員。社会的ルールをアップデートできない社員。組織の調和を乱す「問題社員」の存在は、職場の雰囲気と業績を悪化させ、最悪の場合には会社が崩壊してしまうことも。

 そんな「あの人に辞めてほしい。でもそんなこと言えない……」という悩ましい状況に直面した際に手に取ってほしい書籍がある。『「円満退職請負人」が教える! 全員が幸せになる「トラブルなし」で問題社員に1ヶ月で辞めてもらう方法』(西脇健人/翔泳社)だ。

 著者は弁護士の西脇健人氏。日本で初めて経営者や人事担当者の代わりに、弁護士が直接、従業員への業務改善や退職交渉などを行う企業側の退職代行サービス「Resgent(リスジェント)」を立ち上げた人物だ。

 本書では「円満退職請負人」とも呼ばれている西脇氏が事例を交えつつ、会社に損失をもたらす「問題社員」に円満退職してもらう方法を具体的に紹介している。

 はじめに誤解なきよう伝えておくが、決して排他的な考えの書籍ではない。西脇氏は「問題社員」とは現在の職場や環境面、仕事の内容とミスマッチが起きた結果、問題行動を起こしている人と考えている。ノウハウを語る上で伝わりやすいよう、「問題社員」と表記しているという思いをあらかじめご理解いただきたい。

 日本では会社側からの突然の解雇は、原則として違法とされている。そうした法的リスクがあるため、問題社員は解雇せず、話し合いで円満退社に持ち込むのがベストだと西脇氏は言う。ここでいう円満退社とは、問題社員から自主的に辞めてもらうことだ。

 円満退社を目指す上で知っておきたい“解雇に関する法律”も紹介している。法律の話は身構えてしまうが、対話形式で書かれているので理解しやすいだろう。また、問題社員はどのような思考から問題行動を繰り返しているのかも知れる作りになっている。

 問題社員の円満退職を目指すには、まず3ステップの準備が必要だ。

ステップ①:証拠を集めて事実関係を明らかにする
ステップ②:Xデー(=退職交渉の日)を決める
ステップ③:交渉当日に必要な書類をあらかじめ準備しておく

 西脇氏いわく、Xデーに結論を出させることも円満退職の大切なポイントになるのだという。

 本書では物的証拠の集め方やXデーに最適な時期の選び方など、3ステップの進め方について具体的に解説。交渉時に必要となる解雇理由証明書や退職合意書などのテンプレートも掲載されていて心強い。

 だが入念な準備をしていても、Xデーで経営者側はハラハラするもの。そんな時は「4つの基本スタンス」を意識して交渉を進めていこう。

①これまで働いてくれたことに対する感謝を伝える
②辞めさせる前提ではなく、フラットに話を聞く
③遠回しではなく、ストレートに伝える
④想定問答を用意しておく

 具体的な交渉の流れだけでなく、問題行動について「身に覚えがない」と言われた時の切り返し方なども伝授。もし交渉が決裂しそう、もしくはしてしまった時に経営者が取るべき態度も書かれているので、ぜひ参考にしたい。

 ちなみに、「社員を辞めさせる」という決断をする際に役立つフローチャートも収録しているので、「辞めてもらうほどの問題社員なのか判断できない……」と悩んでいる人にも役立つ。

 自社では問題社員であっても、他社や違う働き方であれば、活躍できる可能性がある。だからこそ勇気を出して、社員全員が幸せになる判断をしてほしい。そう訴えかける西脇氏の言葉に背中を押される経営者はきっと多いはずだ。

 最後に、円満退職を持ちかける前に、経営者自身が見直すべきポイントや、採用時に意識しておきたい視点に言及していることも注目してほしい。問題社員の行動を“その人だけの問題”と片付けず、会社や自分自身の在り方を客観的に振り返る機会になるため、今すぐ対処しなければならない問題社員を抱えていなくても、あらためて経営者としての心構えを確認できる一冊にもなる。

文=古川諭香

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