かわいらしい幼稚園児の女の子が霊能力者!? 日常に蔓延るおぞましい怪異をグーパンで退ける新感覚ホラーアクション『カヤちゃんはこわくない』【書評】
公開日:2025/9/10

マンガなどに出てくる「霊能力者」と聞いてどんなキャラクターを思い浮かべるだろうか。おぞましい怪異に果敢に立ち向かい、不思議な術を使ってたちまち撃退する、冷静沈着で達観した人物……。そんなイメージを持つ人は多いだろう。
しかし『カヤちゃんはコワくない』(百合太郎/新潮社)に登場する主人公で最強の霊能力者・カヤは、なんと幼稚園の年中組の女の子! 非常に愛らしい見た目の彼女は人には見えない怪異が見えるため、しばしば周りからすると不可解な行動をとったりワガママを言ったりする。そのせいで「問題児」と呼ばれ、先生たちから叱られ、他の子どもたちから気味悪がられている。しかし、新たに「カヤちゃん担当」となったチエ先生は、そんなカヤの行動に理解を示し、彼女が人知れず怪異を撃退し、子どもたちを守っていることを知るのだった。
本作は一見すると園児と幼稚園教諭のほのぼのとした物語なのだが、怪異が現れるシーンはバッチリ怖い。そしてカヤはその怪異に対して難しそうな術などを使うのではなく、グーパンチで物理的に怪異を容赦なくなぎ倒す。そのシーンは恐怖とともに爽快感すらあり、ホラー漫画としてはかなり新鮮だろう。さらにそんな激しい一面を持つカヤが、不意に幼稚園児らしい表情や振る舞いを見せる場面がとても際立つ。周囲から誤解されても怪異を撃退し続ける勇敢さと圧倒的な力とのギャップを見せられると、誰もが応援したくなってしまうはずだ。
また、カヤの送り迎えには必ず父親が来るため母親の人物像が謎であり、カヤの家での様子もわからないため、強い力を持つカヤの出自が気になるのも本作を追い続けたくなるポイントだ。
気味の悪い怪異が出現するホラー展開、そして斬新な主人公の活躍。ゾワッとしてスカッとする、そんな新感覚ホラーを楽しんでいただきたい。
