父親の終末期がんを経験した漫画家が「あまり考えないほうがいい」と語る“余命宣告”【著者インタビュー】
公開日:2025/8/13

25歳のとき、ステージ4のすい臓がんだった父親を亡くした漫画家の水谷緑さん。親の死というショッキングな出来事のあとに残ったのは、“ちゃんと父を看取れたのだろうか”という大きな後悔。そのあと、水谷さんが自身の後悔の気持ちを相談したのが「緩和ケアナース」でした——。『大切な人が死ぬとき ~私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた~』(竹書房)では、水谷さんが父親を見送るまでの一部始終や、緩和ケアナースの取材で分かった死にゆく人たち、そしてその家族の心境を伝えています。当事者の体調の変化、残された家族の葛藤などが細やかに描かれ、大切な人を失った人や、今まさに家族の死が目前に迫っている人はもちろん、まだ家族の死を経験していない人にとっても心に響く一冊。大切な人が死ぬとはどういうことなのか? 著者の水谷さんに話を聞きました。
——漫画では、医者が本人に余命を知らせるときに、お母さまが「知らないほうがいい!」と遮っていました。実際にも知らせていなかったのでしょうか。
水谷:実際には、「3ヶ月から1年で亡くなる可能性が高い」というお医者さんの話を父も一緒に聞いていたと思います。でも、母は「日一日とよくなる」と言い、あまり信じたくないようでした。余命は聞いたけどそれはそれとして、余命よりたくさん生きた人は世の中にはいるから…と、信じたい気持ちが強かったのかなと思います。
——家族が余命を宣告されるような病気になったとき、本人が余命を知りたいのかどうかわからないし、知らせるべきかどうか悩む人は多いと思います。水谷さんは、余命宣告についてどう思いましたか?
水谷:余命宣告をされて、最初はすごく腹が立ちました。はっきりと正論を言うお医者さんだったため、“なんでそんなに偉そうなんだろう”と思ってしまって。結局、だいたい言われた通りの余命だったので、医療的な目安としてはかなり合っていたと思います。ただ、インパクトが大きすぎて、言われたほうは決定的な感じがしてしまうから、あんまり余命のことを気にしすぎないほうがいいような気がします。いつ死ぬかは誰にもわからないので。
※書籍出版当時の体験、お話をもとにインタビューを行っています。治療などに関する専門情報は、各医療機関にご確認ください。
文=吉田あき