数百万の先端治療を勧めるクリニックも…。終末期がん患者の家族が「標準治療」を選んだ理由【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/8/14

25歳のとき、ステージ4のすい臓がんだった父親を亡くした漫画家の水谷緑さん。親の死というショッキングな出来事のあとに残ったのは、“ちゃんと父を看取れたのだろうか”という大きな後悔。そのあと、水谷さんが自身の後悔の気持ちを相談したのが「緩和ケアナース」でした——。『大切な人が死ぬとき ~私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた~』(竹書房)では、水谷さんが父親を見送るまでの一部始終や、緩和ケアナースの取材で分かった死にゆく人たち、そしてその家族の心境を伝えています。当事者の体調の変化、残された家族の葛藤などが細やかに描かれ、大切な人を失った人や、今まさに家族の死が目前に迫っている人はもちろん、まだ家族の死を経験していない人にとっても心に響く一冊。大切な人が死ぬとはどういうことなのか? 著者の水谷さんに話を聞きました。

——お父さまの末期がんの告知後、ご家族はセカンドオピニオンに最新治療など、さまざまな可能性をリサーチします。ところが、医師の「おすすめしません。科学的に効果があると実証されているのが標準治療です!」という言葉を受け、標準治療を選択していました。治療法の決定は、心情面も含めてとても難しいと感じました。

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水谷:結構いろいろ調べました。とある先端医療があると聞いて、保険がきかないけれど興味がある。会社を休んで弟と一緒に千葉の遠くの病院まで聞きに行ったら、正直者の先生で、当時「まだデータが出ていないから眉唾物ですよ」と教えてくれました。あと、ほかの先端医療についても聞きに行きましたが、「効かないとも言い切れない」という漠然とした治療で、数回で何百万もするから、かなり商業的。また、いろいろ訪問したり調べたりする中には悪どいクリニックもあって、“どういう気持ちでやっているのかな”って後から気になりました。メリット・デメリットを聞きつつも、先端医療はやはり「ちょっと高いね」と話しているうちに、今度は父の調子が悪くなってしまって。先生の話を聞き、標準治療を選択しました。

——標準治療ではなく、代替医療を考える人は全体の8割もいると知って驚きました。水谷さんはどうでしたか?

水谷:体に良さそうな水を買って飲んでいたのかな。あとは、母の勧めで気功の先生に来てもらっていて、「藁にもすがる気持ちだ」と父が言っていました。そんなにお金は使っていなかったと思います。みんな希望は持つものだと思うし、何かせずにはいられなかったのでしょうね。うちの母は本が好きで、並べて調べるというか疑り深いタイプなので、いろいろ研究していて。緩和の意味でも、がん患者でも飲めるスープを作ったり、フカフカの布団を用意したりもしていました。

——芸能人が受けた代替医療の話などを聞くと、すごく高いイメージがあります。ただ、家族の命には代えられない、という気持ちが伝わってきました。

水谷:たしかに、お金がかかるものが多いですよね。何が効くかどうかは別として、すごくお金持ちだったら先進医療をどんどん受けられると思うので、お金があるかどうかで寿命にも影響が出るかもしれないんだなと思いました。

※書籍出版当時の体験、お話をもとにインタビューを行っています。治療などに関する専門情報は、各医療機関にご確認ください。

文=吉田あき

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