「今日死ぬ」と思って生きている人はいない。終末期がん患者に家族がしてあげられること【著者インタビュー】

マンガ

公開日:2025/8/18

大切な人が死ぬとき ~私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた~

25歳のとき、ステージ4のすい臓がんだった父親を亡くした漫画家の水谷緑さん。親の死というショッキングな出来事のあとに残ったのは、“ちゃんと父を看取れたのだろうか”という大きな後悔。そのあと、水谷さんが自身の後悔の気持ちを相談したのが「緩和ケアナース」でした——。『大切な人が死ぬとき ~私の後悔を緩和ケアナースに相談してみた~』(竹書房)では、水谷さんが父親を見送るまでの一部始終や、緩和ケアナースの取材で分かった死にゆく人たち、そしてその家族の心境を伝えています。当事者の体調の変化、残された家族の葛藤などが細やかに描かれ、大切な人を失った人や、今まさに家族の死が目前に迫っている人はもちろん、まだ家族の死を経験していない人にとっても心に響く一冊。大切な人が死ぬとはどういうことなのか? 著者の水谷さんに話を聞きました。

——薬も使えず、医療行為が何もできなくなった患者さんが「生きていくのはつらいなぁ…」とつぶやく場面では、何とも言いがたい気持ちになりました。

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水谷:がんだと知って自死する人もいるそうですが、その気持ちもすごくわかるんです。母に聞いた話だと、父もそんな気持ちになった瞬間があったようです。だんだん死に近づくから、それだったら自分のタイミングで死にたいと思ったり、こんなにつらいなら死にたいと思ったり。そう思うほどつらい中で頑張って命をつないでいるのだから、そりゃあ生きるのはつらいだろうって思います。

——本人のために何ができるのか、悩む家族は多いのだろうなと感じます。でも一つ言えるのは、「結局死にたがっている人はいない」と漫画の中に書かれていましたね。

水谷:そうですね。なんだかんだ、みんな希望を持って生きているんじゃないかなと。「今日はこのおやつを食べたい」とか、些細な希望であったとしても。私は、当事者が死を自覚したほうがいいと思い込んで取材をしていたんですけど、緩和ケアのナースさんが、そんなのは重要じゃないと仰っていて。どんな患者さんも亡くなる1ヶ月前くらいになると、体が明らかに弱ってきて、本当に死ぬのかと思うようになる。“今日死ぬ”と思って生きている人はいないんです。いつ死ぬかわからないのなら、その時にやりたいことやらせてあげればいいのだと思うようになりました。

※書籍出版当時の体験、お話をもとにインタビューを行っています。治療などに関する専門情報は、各医療機関にご確認ください。

文=吉田あき

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