住む世界が違いすぎる! 天才セレブ作家と庶民派編集者の温度差にクスッと笑えるお仕事コメディ『リリー先生は仲良くなりたい』【書評】

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公開日:2025/8/21

 大人になって交友関係が広くなるにつれ、「この人とは住む世界が違う……」と感じる瞬間に遭遇することもあるだろう。価値観や考え方、日々の過ごし方があまりにも自分とかけ離れている相手は、もはやまったく違う世界で生きているようにさえ感じられるもの。

リリー先生は仲良くなりたい』(桃川ささみ/KADOKAWA)は、そんな「違う世界」に生きるふたりが出会い、徐々に仲を深めていく過程をユーモラスに描いたお仕事コメディだ。

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 主人公は新卒2年目の編集者・芳山愛以(よしやま・あい)。彼女が担当を任されたのは、なんとヒット作を連発する天才小説家・白鷺リリーだった! まるで宮殿のような豪邸に、オートクチュールのドレス、茶葉からこだわり抜いた紅茶。絵に描いたようなセレブ生活に冷や汗が止まらない愛以。

 そんなある日、自宅での打ち合わせ後に食事に誘われた愛以は、ドキドキしながら豪華なディナーを期待する。しかし、予想に反して、目の前に出されたのはまさかのカップラーメン。目を丸くする愛以に、リリーは「毎日食べていると聞いたから好きなのかと思って…。芳山さんの好きなものご馳走したかったの」と、なぜか頬を赤らめながらぽつり。天才でセレブなのにちょっぴりズレていて、だけど不器用な優しさがにじむその姿に、愛以は初めて親近感を抱く。

 以来、ふたりの距離は徐々に縮まっていくのだが、住む世界が違うゆえにどうにもかみ合わない場面も多い。しかしそもそも、人と人が本当の意味で分かり合うのは決して簡単なことではない。それでも愛以とリリーの関係がうまく続いているのは、彼女たちが互いを尊重し、違いを前向きに受け入れているからにほかならないだろう。

 相手のこだわりをそっと見守ったり、自分にない感性を面白がったりするふたりのコミカルなやりとりに、思わずクスッと笑ってしまう場面も多数。

 天才作家と庶民派編集者という一見正反対なふたりが紡ぐユーモラスな日常を存分に楽しみながら読んでみてほしい。

文=ネゴト / 糸野旬

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