些細なことでも関係が悪化してしまう“ママ友”という関係性。「物理的な距離を取る」という解決法【著者インタビュー】
公開日:2025/9/1

子どもが小学校に入学するタイミングで郊外の住宅地に家を買ったとある家庭。主人公・平川里奈は、近所のママ友や町内会の人たちに溶け込み、順調なスタートを切っていた。しかしある日、公園で自分の子どもを激しく叱責する女性を咎めたことをきっかけに日常に変化が。数々の嫌がらせを受けるようになった里奈は、口論になった女性が犯人だと疑い、証拠を掴むために行動を起こしていく。しかし事態は思わぬ方向へ展開し……。閑静な住宅地という閉鎖的な人間関係から悪意のない誰かの行動が人を傷つけていくという人間関係の本質を描く『この街の誰かに嫌われています』(グラハム子/KADOKAWA)。サスペンスセミフィクションである本作誕生の経緯から自身の体験まで、著者であるグラハム子さんにお話を伺いました。
――仲良くしていたママ友と、とあることがきっかけで険悪になっていくエピソードもありました。
グラハム子さん(グラハム子):ママ友って、本当に些細なことで間柄に亀裂が入ってしまいますよね。これは身をもって感じたことでもあって、読者の方からもかなり反響があった部分でした。もちろんすごくいいママ友関係を築けている読者の方もたくさんいると思うんですが、やっぱり辛い経験をした方が感想を描きたくなる作品だと思うので、そういった感想が多かったですね。
――子どもが関連してくる人間関係ということもあって、やっぱりママ友って難しいと私も感じています。他の作品でもママ友との関係について描かれているグラハム子さんですが、ご自身はママ友ってどんな関係だと思っていますか?
グラハム子:仕事とお友達の中間くらいですかね。つかず離れずみたいな。ありがたいことに私にはママ友グループがいくつかあって。長男がきっかけで仲良くなったママ友、妹のママ友、習い事で知り合ったママ友……いろいろなご縁があるんです。そうなるとたとえどこかで揉めても、他の世界があるじゃないですか。実際に揉め事があったわけじゃなくてもそう思える精神自体が大事だと思うんです。主人公は引っ越してきたばかりでママ友もあまりいなかった。そうなるとひとりと深くつながってしまうし、そこが崩れたらもうおしまいな気持ちになってしまうから、辛かっただろうなと思います。
――なるほど。ひとつの関係にのめり込みすぎないというのは人間関係全般で大切なことかもしれませんね。今ママ友との関係に悩んでいる方がいたらなんと声をかけたいですか?
グラハム子:とにかく物理的に距離を取るのが一番だと思います。ちょっと拗れていると感じたらいったん距離を取る。距離を取るのはずっとじゃなくていいんです。少しでも距離を置くと自分の気持ちも落ち着いてきますよね。自分の気持ちが乱れていると周囲のことが実際以上に悪く見えてしまうじゃないですか。そこを冷静になれたら、時間が経てばまた戻れることって多いと思うんです。距離を置いて仕事や趣味といった別のものに意識を向けてみたらどうかな、と思います。
取材・文=原智香