居酒屋で知り合った男性といい雰囲気になりキスをした。その後、まさかの展開に! 日常に潜む恐怖と人間の本性を描く、戦慄の実話コミック【書評】

マンガ

公開日:2025/9/21

「普通に過ごしていただけなのに、なぜこんな目に?」日常の延長線上に、こんな恐怖が潜んでいるとは思わなかった。

身の毛がよだつゾッとした話』(しばたま/KADOKAWA)は、犯罪・人間トラブル・身近な心霊体験にまつわる実話ベースの恐怖エピソードを厳選収録したコミックだ。

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 登場するのは、特別な場所に行ったわけでも、スリルを求めたわけでもない、ただ普通に暮らしていた人たち。にもかかわらず、ある日突然、背筋の凍るような出来事に巻き込まれてしまう。そこで描かれるのは、霊や怪奇現象よりも、人間の本性があらわになったときの恐ろしさだ。

 特に印象的なのは、居酒屋で偶然隣り合った男性といい雰囲気になり、軽い気持ちでキスをした女性のエピソード。しかし翌日、唇が赤く腫れ始める。誰にでも起こりうる日常のひとコマに、真相を知ったとき「あと一歩、間違っていたらどうなっていたのか」と想像せずにはいられない。

 また、新しいバイト先で知り合った男性からメアドを渡された女性の話もゾッとさせられる。無視するのも怖くて同僚に相談していたところ、その男性は退職。落ち着いた日々が戻るかと思いきや、捨てたはずのゴミ袋がドアの前に戻されるようになり……。日常にじわじわと忍び寄る違和感が、やがて確かな恐怖に変わっていく。

 登場人物の多くは、自らトラブルに飛び込んだわけではない。だからこそ、読者にとっても“他人事”とは思えない。良い人に見えた誰かが、実は裏でとんでもない顔をしていた。その瞬間、信じていた分だけ傷は深く、恐怖はよりリアルになる。

 本作を読み終えたあとに残るのは、ただのゾッとする感覚ではない。「誰を信じればいいのか」「日常に潜む危機をどう見抜くのか」といった、現代を生きる私たちに向けたリアルで切実な“警鐘”だ。
 いい人もいる。でも、悪意や狂気を隠して生きている人も少なくない。そんな世界で、自分や家族をどう守るか。
 背筋を凍らせながらも、日常を見直すきっかけを与えてくれる1冊。人の怖さ、社会の闇、そして明日は我が身かもしれないリアルな恐怖に触れてみたい人に、ぜひ手に取ってほしい。

文=ネゴト / すずかん

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