料理して、食べて、心を通わす。アニメも話題の『日々は過ぎれど飯うまし』で描かれる食文化研究部の日常【書評】

マンガ

公開日:2025/9/8

 美味しいものが好きな人や、のんびりとした日常系漫画に癒されたい人には、『日々は過ぎれど飯うまし』(あっと:原案、Quro:漫画/KADOKAWA)がおすすめだ。2025年4月にアニメが放送され、注目を集めている人気作品である。女子大生たちが「食」をテーマに過ごす、ゆるやかで温かなキャンパスライフに、読者の心も自然とほぐれていくはず。

 物語の主人公は大学生の河合まこ。波風を立てないように、目立たず暮らす日々を送っている。そんな彼女のささやかな楽しみが、美味しい料理を作り、食事を味わうことだった。ある日、まこは大学のキャンパスで小学校時代の友人、小川しのん(通称・おしんこ)と偶然再会する。しのんの友人らも加わり、彼女たちは「食文化研究部」と称した部室でダラダラ過ごすためのダミーサークルを結成。ゆるく過ごしながらも、みんなで料理を作り、食べる時間が始まる。

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 人前の小さな失敗に機に自分から周りへ声をかけることも減り、平坦な日々を送っていたまこ。だが、食文化研究部での活動を通じて、少しずつ自分のやりたいことを伝えられるようになっていく。大好きな料理を仲間たちといきいきと楽しむまこの姿を見ていると、読者まで嬉しくなってくる。

 登場する料理は、カレーやパスタ、スイーツなど誰もが親しみのあるメニューが中心。時にはレトルト食品などを活用する場面もある。気の合う仲間たちと一緒に食べれば、何気ない一皿もかけがえのない思い出に変わる。誰かと食卓を囲む喜びや、日常の中にあるささやかな幸せが丁寧に描かれている点も、本作の大きな魅力だろう。

 そして何より、個性豊かすぎるキャラクターたちの掛け合いが楽しい。会話やツッコミはテンポもよく、思わず吹き出してしまうようなやり取りも満載だ。穏やかで温かく、そして少し笑える――そんな絶妙なバランスが、本作を特別なグルメ漫画に仕上げている。なんだか疲れたときに手にとると、不思議と心が満たされるはずだ。

文=ネゴト / fumi

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