動物大好き 令和ロマン・松井ケムリ、旭山動物園の元園長・小菅正夫の“死生観”に感動「動物の生態は人間にも通用するんだな」 チケット即完イベントレポート
公開日:2025/8/31
動物園では目的の動物を「2時間は見る」

トークが終わると、イベントの参加者から事前に集められた質問による質疑応答の時間に突入。「動物園の回り方でおすすめなのは?」という質問に「雨の日に行くこと」と回答したのはケムリさん。「取材があって、雨の日に行ったらめちゃくちゃ良かった。人が少ないし、サルが雨宿りをしているような珍しい姿も見られる」らしい。これには小菅さんも「雨を嫌がるのは人間くらいで、動物は雨を嫌いじゃないから。そこは気にせず、雨の日に見に行ってもいいと思う」とアドバイス。
一方、小菅さんは「動物園の順路のとおりに回るのはダメ。日本人はみんなグルグル回って、せっかく見ているのにどんどん移動するから結局何も見えてない。“今日はオオカミを見る”って決めたらオオカミを2時間は見ないと」と発言。
その理由は「昔、お客さんのオオカミの観覧時間を調べたら平均30秒くらいだったの。自分の頭でこういう動物だってわかっているから、見たつもりになるんだろうね。アメリカの動物園に行ったら、カバのところに親子がいた。カバが水面に顔を出したら『イエイ!』と言ったり、『ヒッポさん、ヒッポさん…』って歌を歌ったりしている。ずっと見ているから動物の細かい行動まで自分で見つけられる」とのことで、動物好きの参考になりそうだ。
続いて、先述の子ゾウのタオについて「タオちゃんの好きな食べ物は?」と振られた小菅さんが「いい質問ですね〜」と孫を愛でるような声で語ったので、ケムリさんはワハハハと大笑い。
小菅さんは「なんでも好きだけど、ありがたいことに、帯広にある農園がバナナの葉と茎をトラックに積んで持ってきてくれるの。食べる前にゆっくり踏みつけて、鼻で実を引っ張り出して食べるのがいちばん幸せそうだな。バナナの葉や茎が来た時に見られたらラッキー」と回答。「展示スペースでバナナの葉や茎をあげているんですね?」というケムリさんの質問に、「うちは隠れては何もしません。全部公開します」と、円山動物園で実施する行動展示のこだわりを語る場面もあった。

自然に逆らうことなく生きる動物たちからの学びがたくさんあることに気づかされたトークイベント。『聴診器からきこえる 動物と老いとケアのはなし』でも、小菅さんが関わってきた動物たちのエピソードのほか、「人が言葉と引き換えに失ったもの」「人だけが介護をする理由」など、人の生き方にも迫る興味深い内容が豊富に語られている。
取材・文=吉田あき 撮影=島本絵梨佳