細田守「『この夏の星を見る』は東映の映画という感じがしない」山元環とお互いの映画語る、特別対談【インタビュー】

文芸・カルチャー

公開日:2025/8/29

原作を通して自らのオリジナリティと向き合う

――『時をかける少女』も『この夏の星を見る』も、小説が原作となっていますが、原作ものを手がける上での挑戦はありましたか?

細田:たとえば大林宣彦監督の映画は、僕も学生時代に観てたけど、その影響を自分の映画に出すわけにはいかなくて。じゃあどうするの? ということを突きつけられる体験ではあったけどね。 

山元:原作とは違うコンセプトを自分の中でどう組み直していくか、これならいけると思えるアイディアの一つ目って重要な気がするんですよ。「時をかける少女」には原作小説も大林監督版の実写映画もあるが、アニメは細田監督ならではのオリジナルの映画になっている。ただ模倣するのではなく、自分の映画にする意味を求めたいじゃないですか。

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細田:その通り。今ってさ、原作ものを手がける作り手はオリジナリティが発揮しづらいよね。

山元:そうですね。

細田:僕は自分の映画を自分で小説にしたから特に思うんだけど、小説と映画は描くことが全く違うんです。映画では観る人に想像させるためにどういう仕掛けを作るか、みたいなところがあるんだけど、小説はまた別の方法で体験化するということをやっている。だから原作通りに映画化する、というのはどっちにとってもよくないと思うんだよね。山元監督が偉いのは、辻村さんみたいな優秀な作家を前にして、ちゃんと自分の映画にしていること。キャラの心情というよりは、スターキャッチコンテストの場そのものを描くことにシフトしているところが、映画の独自性につながっている。辻村さんももちろんそれを理解しているし、筒井(康隆)先生もそうですけど、それでこそお互いの持ち味を引き出せるんだと思います。

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青春から遠く離れて――果てしなき未来のフィルモグラフィ

――11月には細田監督にとって4年ぶりの新作となる『果てしなきスカーレット』(以下、『スカーレット』)の公開も控えています。

細田:『この星』と『時かけ』には青春ものという共通項がありますけど、『スカーレット』はね、予告編を観ていただければわかりますけど、血まみれの復讐劇ですから。

山元:だとしたら、僕も将来、血で血を洗う時代劇を作っているかもしれないですね(笑)。

細田:でも実際ね、監督にとってフィルモグラフィをどう築いていくかは大事だと思うんですよ。その中で、スケールを少しずつ広げていくことは一つの手というか。スケールを広げるにはそれなりのお金とか信用が必要だけど、山元監督は『この星』でかなりの信用を手に入れたことと思うから、それをどう使うかだよね。次に何を撮るかが大事だと思うので、ぜひまた、これは今までになかったなと思わせられるようなものを観せてもらいたいです。

山元:いや、ありがとうございます。頑張ります!

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構成=奈々村久生

■対談インタビュー全文はこちら
https://kadobun.jp/feature/talks/entry-124812.html

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細田 守(ほそだ まもる)
1967年富山県生まれ。91年東映動画(現・東映アニメーション)入社。アニメーターおよび演出家として活躍後、フリーに。『時をかける少女』(06年)、『サマーウォーズ』(09年)を監督し、国内外で注目を集める。11年にはアニメーション映画制作会社「スタジオ地図」を設立。監督・脚本・原作を務めた『おおかみこどもの雨と雪』(12年)、『バケモノの子』(15年)はともに大ヒットとなり、『未来のミライ』(18年)ではアニー賞を受賞、米国アカデミー賞長編アニメーション部門にもノミネートされた。『竜とそばかすの姫』(21年)では、カンヌ国際映画祭のオフィシャル・セレクション「カンヌ・プルミエール」部門に選出され、世界中で注目を集めている。

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山元 環(やまもと かん)
1993年1月22日生まれ、大阪府出身。大阪芸術大学映像学科を卒業。卒業制作『ゴロン、バタン、キュー』がPFFアワード2015で審査員特別賞と神戸賞、第27回東京学生映画祭で準グランプリと最優秀役者賞、第18回京都国際学生映画祭では沖田修一賞、李鳳宇賞、観客賞を受賞。文化庁委託事業「ndjc2018:若手映画監督育成プロジェクト」で短編映画『うちうちの面達は。』を監督。短編『ブラック』が京都国際映画祭2020クリエイターズファクトリーエンターテイメント映像部門にてグランプリを受賞。2019年に公開されたショートフィルム『ワンナイトのあとに』がyoutubeで300万回再生され話題に。さらに、監督・脚本を務めたBUMP配信ドラマ「今日も浮つく、あなたは燃える。」の切り抜き等がSNSで総再生回数4億回を超える。近年は日本テレビ「夫婦が壊れるとき」、テレビ東京「沼オトコと沼落ちオンナのmidnight call〜寝不足の原因は自分にある。〜」などを監督。映画『この夏の星を見る』で商業長編デビューを果たす。

時をかける少女 A Novel based on the Animated Film
(細田守/KADOKAWA)定価:3,080円 (本体2,800円+税)

待ってられない未来がある。あの名作アニメ映画を細田守監督自ら小説化!
ある夏、偶然“タイムリープ”という能力を手にした女子高校生の真琴。ついてない毎日を変えるため、ささいなことで時間を跳び越えタイムリープを繰り返すが、その積み重ねの先に思いもよらないピンチが訪れる。かけがえのない時間と大切な人を救うため、真琴が決めた未来とは――。
※本作は劇場版アニメーション映画「時をかける少女」(原作 筒井康隆/脚本 奥寺佐渡子/監督 細田守)をもとに小説化したものです。
https://www.kadokawa.co.jp/product/322505000585/

©2025「この夏の星を見る」製作委員会
©2025「この夏の星を見る」製作委員会

映画この夏の星を見る ─公開中
原作:『この夏の星を見る』(辻村深月/KADOKAWA)
監督:山元 環 脚本:森野マッシュ
音楽:haruka nakamura 主題歌 「灯星」 haruka nakamura + suis from ヨルシカ (Polydor Records)
桜田ひより 水沢林太郎 黒川想矢 中野有紗 早瀬憩 星乃あんな/岡部たかし ほか

『この夏の星を見る 上』https://www.kadokawa.co.jp/product/322502000850/
『この夏の星を見る 下』https://www.kadokawa.co.jp/product/322502000849/

©2025 スタジオ地図
©2025 スタジオ地図

映画『果てしなきスカーレット』 ─11月21日(金)公開
監督・脚本・原作:細田 守

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