友情のはじまりは映えスイーツから! シニア女性と少年の癒やし系ヒューマンドラマ『お茶の間スイーツガーデン』【書評】
公開日:2025/9/19

疲れや気分の落ち込み、息苦しさを感じた時、甘い物を食べるとほっと癒やされる。スイーツから得られる癒やしと友情。それらが温かみのある作風で描かれているのが『お茶の間スイーツガーデン』(佐倉イサミ/KADOKAWA)だ。
長年にわたり親や夫から我慢を強いられ続けた女性・サト。それらの影響から性格が歪み、不愛想な言動をとっては周囲から疎まれる存在となっていた。
夫が亡くなり遺品整理をしていたある日、自宅にしまってあったスクラップ本からレシピを見つけ、スイーツを食べることが長年の夢のひとつであったことを思い出す。
その夢を叶えるため、レシピを見ながら作ったプリンを食べていたところ、近所で評判の優等生少年・宗介に見つかってしまい…。
その時の宗介は趣味の女装姿。スイーツを食べていることを近所に知られたくないサトに対し、女装姿を言いふらされたくない宗介は、お互いの秘密を保持する「同盟」を組ませようとする。
この出会いをきっかけに、ふたりはサトの家で可愛いくてお洒落な映えスイーツ作りをする仲となり、交流を深めていくのだった。
プリンやカップケーキといった身近で素朴なスイーツから、最近人気のスイーツまで。登場するスイーツたちは甘い物好きの心をくすぐる。作中ではスイーツのレシピも紹介されているので、食べたい!と思ったらすぐに実践できる。
本作ではスイーツ作りの楽しさや癒やし効果だけではなく、人間関係の複雑さ、心の痛みについても描いている。物語を読み進めていくと、宗介が強いストレスを抱えていることが垣間見えるだろう。
宗介にとってサトの家はサードプレイスであり、くつろげる空間となっていた。しかし、サトのある言葉がきっかけでふたりはギクシャクしてしまう。この歪な空気をふたりがどのように乗り越えていくのか、みどころだ。
辛さや息苦しさを抱える人たちに、そっと寄り添ってくれる本作。もし今、癒やされたい気持ちがあるのなら、ぜひ本作を読んで一息ついてみて欲しい。